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学習機能

脳は外部の環境変化に適応できる。その例として言語の獲得が挙げられる。 日本に生まれ、日本で育った子供が成長とともに日本語をしゃべるようになるのはごく自然のことである。 それは、その子供が日本人夫婦の子供であり、日本人としての脳をもって生まれたからではない。 その子供の周囲に日本語を使う人が多いからである。その子供は単語を発音し、もし間違いであれば周囲の人間(親)が教師としてその発音を訂正する。 そして単純な文章を使い始め、同様にその文章が間違いであれば修正する。これを繰り返して、ついには日本語という複雑な言語体系を獲得するにいたる。 それは、日本語を話す周囲の人間との会話という具体的な経験を繰り返すことによって学習したといえる。またそのことは、訓練によって脳が環境に適応したことを意味する。

このとき脳の内部では、学習の過程においてニューロン間の結合が強まったり弱まったりすることで、間違いを少しずつ訂正していく。 最終的に教師による修正が必要なくなったとき、ニューロン間の結合強度の度合いは正解の出力が得られるように調節された状態にある。

より具体的な例として、コンピュータに音読させるために、コンピュータプログラムによって文字と音を変換する規則体系を構築した例と、ニューラルネットワークに学習させることで音読させた例がある。 視覚障害者が印刷物を利用できるように、英語で書かれた文章を発音するようなプログラムが開発された。 英語は、同じ文字でも場合によって発音が違うことが起こる。例えば「ADAM」の最初のAと3文字目のAでは発音が異なる。 文字を音へ変換するには、その文字の周辺を考慮しなければならず、プログラムは複雑なものとなった。 そして速い計算機の導入によって期待する機能を達成し、コンピュータに本を音読させた。その後、同じ機能を実現するためにニューラルネットワークが導入された。 文字の読み取りには同じスキャナーを用い、同じ音声合成装置が使用された。 文字の入力と対応する出力を用いて、ネットワークにおけるニューロンの結合強度を自動的に調節することで学習させた。その結果、文字の音読は高い正解率を達成した。

この例から言えることは、問題によってはその解法が複雑であり、プログラムとして記述することが困難な場合があるが、そのようなとき、ニューラルネットワークが有効であるという可能性を示しているということである。 なぜならニューラルネットワークは、入力パターンとそれに対応する出力を与える作業を繰り返すだけだからである。 ニューラルネットワークには複雑な解法を記述する必要がないためである。



Deguchi Lab. 2015年3月4日