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学習と気象予測方法

1章で述べたように、ある地点での気象要素のみで気象予測が可能な学習的予測では、過去の天気に関する経験や記憶、そして知識が必要となる。観天望気などの言い伝えや我々が普段何気なく行う天気の予測は、同じような天気のパターンに遭遇した場合、普段の経験から未来に起こりうる天気を記憶から呼び出すという動作を行っており、「同じ天気パターンに属する日の未来の天気は、同じような天気パターンに属する可能性が高い」という知識を使っているといえる。

ある地点での観測データのみで天気を予測するためにはその地点の観測データからその日の天気のパターンを作り出す必要がある。このパターンを作り出す作業は3.6項より自己組織化マップにその地点の過去の観測データを全て入力し、学習を繰り返せばよい。また、学習と同時に自己組織化マップは量子化誤差の少ないベクトル量子化を暗示的に行なっているので、予測の段階での計算が複雑になるのを防ぐ働きもある。

図 4.1: 観測データ学習後の自己組織化マップの競合層
\includegraphics[height=80mm]{somcod.eps}
天気の予測を行うときも同様に、学習済みの自己組織化マップに当日の観測データを入力し、最も強く反応した競合層のニューロンを調べることでその観測データがどの天気パターンに属するかを知ることができる。[8]近い競合層のニューロンは同じ天気パターンに属するという仮定のもとで、「同じ天気パターンに属する日の未来の天気は、同じような天気パターンに属する可能性が高い」という知識を使うと、予測したい日の前日(明日の天気を知りたければ今日)の観測データを自己組織化マップに入力して最も強く反応したニューロンを探し、そのニューロンの周囲ですでにラベルづけされているニューロンの日付が同じパターンに属すると考えられるので、その日の翌日の天気を明日の予測天気とすればよい。

例として、図4.1に学習完了後の自己組織化マップの競合層とニューロンに付けられているラベルの位置関係を示す。今日の観測データを自己組織化マップに入力して図の塗りつぶした部分のニューロンが最も強く反応した場合、その周囲のすでにラベル付けされているニューロン、すなわち2009年9月23日の翌日である2009年9月24日の天気を明日の予想天気とすることで予測を行う。


Deguchi Lab. 2011年3月4日