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形式ニューロンモデル

このような神経細胞の機能と応用分野との関連性を強化させるには、理論的なモデル化が必要となる。前述した細胞内と細胞外の電位差に関する現象を忠実にモデル化したものは有名なものとしてHodgkin-Huxleyのモデルがある。このモデルは非線形連立微分方程式で記述され、神経細胞のミクロ的な立場からモデル化したものであるが、解の振る舞いが完全に明らかにされたわけではなく、理論的には取り扱いにくいものとなっている。

その一方で神経細胞の細胞外や細胞内の電位差などはあまり考えず、ニューロンが多数にわたるマクロな立場からモデル化したものがMcCullochとPittsが考案した、図2.2の形式ニューロンモデルである。

図 2.2: 形式ニューロンモデル
\includegraphics[height=50mm]{fig2-2.eps}

このモデルでのニューロンの振る舞いは、樹状突起からの入力を受け付け、細胞体で電位を加算し、発火時の神経インパルスを出力するという事に着目している。

形式ニューロンの一連の働きについて考える。$x_{1}$から$x_{n}$までの入力は、各樹状突起の細胞膜に対する影響の強さを示す$w_{1}$から$w_{n}$までの結合荷重と掛け合わされていく。この重みが正の場合は接続されたシナプスは興奮性であり、負の場合はシナプスが抑制性である。また、重みが零の場合はシナプスが接続されていないということになる。

形式ニューロンモデルの出力は閾値$ \theta $を使って、式2.1のように表される。

\begin{displaymath}
y=f \left( \sum_{k=1}^{n} w_{k} x_{k} -\theta \right)
\end{displaymath} (2.1)

ここで表される関数$f(u)$は、入力に対してどのようにニューロンを発火させるかということを決める出力関数である。一番単純なものとして図2.3(a)の単位ステップ関数(式2.2)や、0付近で線形に出力が変わる図2.3(b)の区分線形関数(式2.3)があるが、最もよく用いられているものは図2.3(c)のように全領域で微分可能なシグモイド関数(式2.4)である。


$\displaystyle f(u)= \left \{ \begin{array}{cc}
1 & (u > \theta)\\
0 & (u \leq \theta)\\
\end{array}\right.$     (2.2)


$\displaystyle f(u)= \left \{ \begin{array}{ccc}
1 & (u \geq \theta)\\
\disp...
...eta} & (\vert u\vert < \theta)\\
0 & (u \leq -\theta)\\
\end{array}\right.$     (2.3)


\begin{displaymath}
f(u)=\frac{1}{1+ \exp (- \epsilon u)}
\end{displaymath} (2.4)

図 2.3: ニューロンモデルに使われる入出力関数の例
\includegraphics[width=50mm]{fig2-3-a.eps}
(a) 単位ステップ関数
\includegraphics[width=50mm]{fig2-3-b.eps}
(b) 区分線形関数
\includegraphics[width=50mm]{fig2-3-c.eps}
(c) シグモイド関数



Deguchi Lab. 2011年3月4日