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4. 気温予測実験

過去の研究より、バックプロパゲーションを学習に用いたニューラルネットワークに 差分方程式のダイナミクスを学習させることは、 ほぼ可能であることが分かっている[1, 2]。 そこで今回は、気温を学習対象に実験を行なった。

気温予測は、前日分もしくは前七日分の最高気温、最低気温から 次の日の最高、最低気温を出力するものとする。 気温予測を行なうニューラルネットとして表1に示す Atype,Btype,Ctypeの三つを用意した。 また、学習のデータとして、 1993年,1994年の名古屋における最高気温、最低気温を使用した[3]。 実際の学習はこの二年間の気温を3万回学習する。

 

 
type 入力 出力 ネットワーク型
A前日の気温翌日の気温階層型
B7日分の気温翌日の気温階層型
C前日の気温翌日の気温内部記憶階層型
表 1: 気温予測ニューラルネット

   figure62
図 3: 中間層200個における学習

3に示すのは、A,B,C typeにおける学習中の誤差変化である。 この平均誤差とは、学習している'93年と'94年を予測させた時の誤差である。 最終的に2年間の平均誤差は、 Atype 3.44, Btype 0.52, Ctype 1.04 となり、7日分の入力を行なったBtypeが最も小さい平均誤差を出した。

   figure70
図 4: Btypeによる'93'94年の気温予測

   figure77
図 5: Ctypeによる'93'94年の気温予測

ここでBtypeとCtypeに注目し、それぞれ1日、1日の誤差を見てみた (図4,図5)。 すると、かなり特徴の違いが出た。 平均誤差の最も小さかったBtypeは、 誤差の大きい部分、小さい部分が極端に出ているのに対し、 Btypeより平均誤差の大きいCtypeは、 大小の誤差が2年間通して均等に出ている。 Btypeに現れる大小の誤差部分の日づけを見てみると、 誤差の大きい部分は8月頃、 小さい部分は1月頃であった。 つまり、冬によく当たり、夏外れやすい気温予測となったわけである。 逆にCtypeは、 そのような傾向はなく夏でも冬でもそこそこ当たる気温予測となった。 このような特徴の違いから内部記憶を持つニューラルネットは、 季節による温度変化の学習が出来ていると考えられる。



Deguchi Toshinori
1998年05月21日 (木) 10時45分29秒 JST