結論

本研究では, 江本らのカオスニューラルネットワークモデルを改変し, H.M.の臨床例に対応する現象を再現した。

入力層から連合野モジュールへの入力を弱く設定し, 連合野のパラメータを一部変えることによって, 各モジュールの特徴の差異が大きくなり, 中期記憶, 長期記憶を分類して記憶する現象や, H.M.の臨床例にあった現象の一部を 再現することができていると言える。しかし, H.M.の臨床例の内, 逆向性健忘については 完全に再現できているとは言い難い。

逆向性健忘を完全に実現するためには, 自身の持つ記憶を想起し再学習しながら, 外部からの入力も同時に学習するカオスニューラルネットワークを 連合野モジュールに用いる必要がある。そのために, 連合野モジュールは入力を受け取る動作と自由想起を1stepに1回ずつ, 計2回計算を行うことや, $ \alpha$ の値を更に細かく調整する必要があると考えられる。



Deguchi Lab. 2017年3月6日