本章では、カオスとカオスアトラクタについての説明を行なう。 まずこの節ではカオスについての説明をする。
カオス(chaos)という単語は、日本語に訳せば 「混沌」や「無秩序」となる。 この言葉は近年、科学用語としても用いられるようになった。 小数自由度の決定論に従う、いわゆるノイズを含まない力学系における カオスと呼ばれる現象が、科学や工学などの諸分野に大きな波紋を広げつつある。
カオスとは決定論に従う力学系の解が初期値に鋭敏に依存する 予測不可能な振舞いを示し、そのアトラクタとしての次元が、 非線形のフラクタル次元となる現象である。 カオス現象は、自然物、人工物を問わず非線形システムにごくごく 当たり前に生じるものであり、風に吹かれて揺れる木の葉や地震の波、 海岸にうちよせる波など日常生活の中にも観察できる。 ラグビーボールが何回かのバウンド後に、 突然方向を変える現象もカオスの一例であるといえる。 またカオスは生体の活動に対しても重要な役割を占めている。 例えば心臓の鼓動などがそれにあたる。心臓の動きは常に一定でなく、 強くなったり弱くなったりしている。刻々と変動していく予測のできない 自然環境の変化に対して、一定の鼓動であるよりも柔軟に対応できるように なっている。
カオスの定義は様々な研究者によってなされているが、 それらを総じて要約すると、 カオスとは、
「決定論的なシステムがつくり出す非周期振動」