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カオスとは[3]

本章では、カオスとカオスアトラクタについての説明を行なう。 まずこの節ではカオスについての説明をする。

カオス(chaos)という単語は、日本語に訳せば 「混沌」や「無秩序」となる。 この言葉は近年、科学用語としても用いられるようになった。 小数自由度の決定論に従う、いわゆるノイズを含まない力学系における カオスと呼ばれる現象が、科学や工学などの諸分野に大きな波紋を広げつつある。

カオスとは決定論に従う力学系の解が初期値に鋭敏に依存する 予測不可能な振舞いを示し、そのアトラクタとしての次元が、 非線形のフラクタル次元となる現象である。 カオス現象は、自然物、人工物を問わず非線形システムにごくごく 当たり前に生じるものであり、風に吹かれて揺れる木の葉や地震の波、 海岸にうちよせる波など日常生活の中にも観察できる。 ラグビーボールが何回かのバウンド後に、 突然方向を変える現象もカオスの一例であるといえる。 またカオスは生体の活動に対しても重要な役割を占めている。 例えば心臓の鼓動などがそれにあたる。心臓の動きは常に一定でなく、 強くなったり弱くなったりしている。刻々と変動していく予測のできない 自然環境の変化に対して、一定の鼓動であるよりも柔軟に対応できるように なっている。

カオスの定義は様々な研究者によってなされているが、 それらを総じて要約すると、 カオスとは、

「決定論的なシステムがつくり出す非周期振動」

という現象であるといえる。 ここでいう決定論システムとは、 破ることができない不変の法則からなる系という意味であり、 非周期振動というのは、 専ら偶然に支配される確率論的な運動という意味である。 すなわちカオスは、 不変の法則に支配される系にありながら法則性のない 予測不可能な非周期的振舞いということである。



Deguchi Toshinori
Wed Jul 12 17:04:26 JST 2000