実際にカオスの例を示す。
式(3.1)は、 第 t+1 項 X(t+1) の値が第 t 項 X(t) の値によって定まる 一般に1次元写像と呼ばれる数列である。
この系の入出力特性は図3.1の様になる。 この写像はテント写像と呼ばれる。
カオスの特徴を見るためにこの系に実際に初期値を与えて振舞いを観察してみる。 初期値として0.123456と0.123457を として代入し, 横軸を t , 縦軸を X(t) としてプロットしグラフを描く。 のグラフを図3.2、 のグラフを図3.3に示す。 この二つのグラフを見ると、 始めの数点は似たような振舞いをするが、 t=20 のあたりから突如振舞いに変化がみられる。 カオスはこのように初期値に鋭敏に反応するという特徴をもつ。 これは図3.1を見ると分かるように、 同じ X(t+1) を与える X(t) が二つ存在するため、 グラフの平均的な勾配が急であるからである。 よって非常に近い二つの初期値を持っていたとしても その振舞いは互いに急に離れていく。 このことは図3.2、図3.3を見ても明らかである。
乱れのないカオス系においては、 写像と初期値が与えられれば先の値は予測できるため、 先ほどの初期値鋭敏性はさほど問題ではない。 しかし自然界のように常に雑音、乱れの存在する系においては、 小さな乱れであっても鋭敏に反応するため予測ができなくなってしまう。 この(カオス+小さな乱れ)の系が、本来は決定論的に定まるカオスを 実質的に非決定論的存在にしてしまっているのである。
以上に述べたカオスの特徴をまとめると次のようになる。