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結論

本研究では、逐次学習法を用いたカオスニューラルネットの動的想起状態の改善を試みた。

はじめに、想起時のニューラルネットに対し定数値を加えるという方法を行なった。 大文字アルファベットを表した tex2html_wrap_inline1732 のパターンを 学習させ想起時に定数を加えたところ、 動的想起状態は改善された。 何も入力しない場合は、学習させたパターン全てを想起できるのは3個までであったが、 定数0.3を入力した場合には5個となった。 また他の値を入力した場合にも良くなり、 値によってそれぞれの学習個数に対する得意不得意が有ることが分かった。 これは、学習個数によって色々なパターンに遷移していきやすい バイアスが異なるためだと考えられる。

次に、想起時のニューラルネットに対し乱数値を加えるという方法を行なった。 これは、値によってそれぞれの学習個数に対する得意不得意が有るならば、 ランダムに色々な値を加えることで 不得意な部分をカバーできるのではないかと考えたからである。 正の値だけの乱数や正負両方の乱数など、 4通りの方法で乱数を入力して想起させたところ、 全ての方法において動的想起状態は改善された。 正の値だけの乱数を入力した場合、定数値のときの得意不得意を少くしたような出力となり、 学習させたパターン全てを想起できるのは7から8個程度までとなった。 これは、予想した通り乱数値によって、 個々の値の不得意な部分がカバーされたためだと考えられる。 また負の値を含む乱数を入力した場合は正の値だけの乱数の場合よりも良い出力となり、 学習させたパターン全てを想起できるのは9個程度までに改善された。

次に、より良い学習状態を作りだすために学習回数を変化させるという方法を行なった。 そのために、ノイズの入ったパターンを入力することで学習の強さを測定した。 その結果、学習の強さは学習個数が少い程強いこと、パターンによって強さが違うことが分かった。 これは、憶えるものが少いほどしっかりと憶えることができ、 憶えるものによって得意不得意が有るという実際の脳と同様の性質を表わしている。

そして、学習を変化させていきそれぞれの学習の強さを測定した。 その結果、60回の学習を15セット行なうと、これまでの50回100セットに比べて より強く学習できることが分かった。

最後に、変化させた学習回数で学習したニューラルネットに対し 定数値や乱数値を加えるという方法を行なった。 その結果、いずれの入力方法でも動的想起状態は改善されず、 外部から加える値の影響が小さくなっただけであった。 これは、学習の強さが強くなっているために、 外部からの入力が相対的に弱くなっているためだと考えられる。 また、逐次学習での動的想起状態と学習の強さの間には あまり相関が無いのではないかと考えられる。

以上の結果から、逐次学習法で学習した場合の動的想起状態を改善するためには、 想起時に値を入力することが効果的であることが分かった。 また、学習回数を変化させてより強い学習の強さをすることは、効果が無いことが分かった。 今後の課題としては、定数や一様乱数以外の値を加えたり、 カオスニューロンのパラーメータを変化させて新たな動的想起状態を作ってみるなどがある。 また、学習の強さを弱くしたり、より多くのパターンを学習させた場合にも、 動的想起状態と学習の強さの間に相関が無いのかを調べることなども有る。

謝辞

最後に本研究を進めるに当たり、一年間を通して多大な御指導を賜わりました 出口利憲先生に深く感謝するとともに、同研究室において助言をいただいた 専攻科の今村豊治氏、古田彰吾氏、 また同研究室においてともに学んだ川延尚美氏、森章光氏、山田和慶氏 に厚く御礼を申し上げます。



Toshinori DEGUCHI
2005年 4月 1日 金曜日 16時36分09秒 JST