ファジィ制御の概説

 ファジィとは英語の形容詞で「曖昧な」「境界がはっきりしない」という意味で使われる言葉です。ファジィ制御を日本語に訳すと曖昧な制御となりますが、その意味は人間が日常的に使う曖昧な言葉を用いて制御を行うというものです。それでは、身近な例を参考にファジィ制御の概要について説明したいと思います。

 通常、コンピュータは商品Aの値段は何円であるとか、現在の気温は何度であるといった明確な数値しか扱うことができません。しかし、これでは不便な場合が多いです。例えば、あなたが車に乗っていて、運転している相手に「もう少し左に寄ってください。」と指示を出したとします。この場合、相手が人間であれば、すんなりと車を左に寄せてくれるでしょう。しかし、相手がコンピュータだった場合はどうでしょうか?前述した通り、コンピュータで扱えるのは数値が明確なものだけです。そのため、「もう少し」という曖昧な言葉で指示を出されても理解をする事ができません。人間は日常生活を営む上で必要な様々な知識を持っています。しかし、これらの知識のほとんどは日常の会話で用いられる曖昧な言葉で表現されています。当然、これらの知識は数式などで精密に表現することはできません。そのため、人間がうまく行える作業をコンピュータにより自動化することは困難な場合があります。

 ファジィ制御では人間が日常的に用いている知識をそのまま利用して制御を行う事ができます。つまり、人間の機能に近い制御をコンピュータで実現することが可能になります。そのため、現在ではファジィの応用範囲は非常に広く、多彩な場面で利用されています。応用例を以下の表に示します。

ファジィ全自動洗濯機 洗濯物の汚れ具合を光センサーで検地してマイコンでファジィ制御し最適な選択時間を設定する。
ファジィインテリジェントエレベータシステム エレベータの運行管理にファジィ理論を用いている。各エレベータが「乗り場呼び」に対して到着するまでにかかる時間を予測する際に、途中で新たに複数の「呼び」が発生する場合などを想定し、最短と最長の到達時間を計算して予測時間に幅を持たせ、実際の運行結果と予測時間との誤差を最小限にしている。
仙台市地下鉄 ファジィ自動運転システム 地下鉄をファジィ制御で自動運転させることで、従来のコンピュータ制御に比べ、運転が極めてスムーズになっただけでなく、電力消費も数%節約できるようになったといわれている。

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