既知パターンを外部入力として与えた時には、そのパターンの近傍のみが探索される。これは2.5節で述べたネットワークのエネルギー関数の影響で、ネットワーク全体のエネルギーの極小点に向かおうとする相互結合の力と、外部入力による入力されたパターンに近付こうとする力が同じ向きに働くため、素早く入力されたパターンを想起できると考えられる。
未知パターンを外部入力として与えた時には、そのパターンをネットワークは学習していないために想起することができず、学習しているパターンの間をカオス的に遍歴する。これは既知パターンの時と同様の二つの力が働いているが、未知パターンがエネルギーの極小点に対応していないため、両者の力の向きが一致しない。そのため学習しているパターンの間をカオス的に遍歴すると考えられる。また、外部入力の時間加算を考慮しているので、最終的にはカオス的遍歴ではなく、未知パターンのみを出力する状態になる。これは、同じパターンが外部入力として与え続けられると、外部入力の項がニューロン間の相互結合の項や不応性の項の影響よりも大きくなるためである。
このような、未知パターン 既知パターンを外部入力した時のネットワークのダイナミクスの違いを利用して両者の判別を行なう。
このダイナミクスの違いを表すために変化量Vを次式のように定義する。 についてはあとで述べる。
式(4.1)はパターンが入力されてから になるまでの全ての時間の全てのニューロンの変化を足し合わせたもので、未知パターンが与えられたときにはカオス的遍歴を行なうので変化量は大きくなり、既知パターンの場合は素早く入力されたパターンを想起するので未知パターンよりも変化量は小さくなる。つまり、変化量があるしきい値
を越えた時、
入力パターンが未知パターンであると判別する。