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第1章 はじめに

近年において、ニューラルネットワークは 開発されて間もない分野であるが、画像処理やパターン認識などにおおいに活躍している。また、音声や文字認識の成功例が報告されており、学習できる事が実証されている。

ニューラルネットワークというのは、脳の神経細胞(ニューロン)が結合した神経回路網のことである。その構造や情報処理メカニズムにヒントを得て、脳の持つ学習能力や自己組織化能力など優れた情報処理能力を人工的にコンピュータで実現させようと研究が進められている。

だが、ニューロンの実際の機能を忠実にモデル化するのは不可能である。1943年にマッカロとピッツが提案した多入力−1出力の非線形素子モデルはニューロンの基本的な部分についてのみ考えたモデルであった が、その論理演算系としての万能性を示した。 さらに、ヘッブの学習モデル, バイオニクスなど、現在に至るまで大きな影響を及ぼす生体研究の基本原理が提案され、ローゼンブラッドのパーセプトロンにより学習する人工システムの具体的な設計指針が与えられた。 ところが、1969年に、ミンスキーとパパートにより、パーセプトロンの能力の限界が明らかにされると、それ以後ニューラルネットワークの研究は急激に下火になっていった。 [1]

しかし地道な研究が続けられ、近年になってラメルハートらがバックプロパゲーションと呼ばれる学習則を提案したのをひとつのきっかけとして、1980年代に再びニューラルネットワークとして注目を浴びるようになり、現代に至っている。

1982年頃、林初男と石塚智が海産の軟体動物であるイソアワモチの巨大軸索を周期的に電気刺激した系でカオスを見い出した。 [2] そして最近、高等動物の脳の活動状態からカオスのデータがとれるようになり、カオスは情報の生成、喪失、加工などといった働きを持っていることがわかった。ニューロンにこのカオスを適用することにより、曖昧さが生まれ、脳により近い動作を示す。このようなニューロンをカオスニューロンといい、カオスニューロンで構成されるネットワークがカオスニューラルネットワークである。

本研究は、このニューラルネットワークを用いて周期パターンの検出を行なわせようというものである。ここでいう周期パターンとは、連続して入力される(主として文字の)パターンにおける、繰り返しがみられるパターン列のことである。 例えば AABDECDEBという入力に対し、''DEを検出せよ''と指示を与えれば、D のあとに E が入力された時のみ出力は1を返すという具合である。 そこで、カオスニューロンあるいはフィードバックを設けた中間層を用い、学習則にバックプロパゲーションを用いたニューラルネットワークを構成し、周期パターン検出の実現をめざす。



Deguchi Toshinori
1996年12月18日 (水) 11時08分12秒 JST