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固定座標への強化を用いた気象予測方法

1章で述べたように、 ある地点での気象要素のみで気象予測が可能な学習的予測では、 過去の天気に関する経験や記憶、そして知識が必要となる。 観天望気などの言い伝えや我々が普段何気なく行う天気の予測は、 同じような天気のパターンに遭遇した場合、 普段の経験から未来に起こりうる天気を記憶から呼び出すという動作を行っており、 「同じ天気パターンに属する日の未来の天気は、同じような天気パターンに属する可能性が高い」 という知識を使っているといえる。

ある地点での観測データのみで天気を予測するためには その地点の観測データからその日の天気のパターンを作り出す必要がある。 このパターンを作り出す作業は3.6節より 自己組織化マップにその地点の過去の観測データを全て入力し、 学習を繰り返せばよい。また、学習と同時に自己組織化マップは 量子化誤差の少ないベクトル量子化を暗示的に行なっているので、 予測の段階での計算が複雑になるのを防ぐ働きもある。 この方法により自己組織化マップを作ると、 入力の一日のデータに対して一つのニューロンが対応して反応するような マップができる。

翌日の気象の予測を行うマップの作成では、 自己組織化マップの勝者ニューロンの選択は行わない。 そのかわりに、予測の元となる天気のパターンを分類したマップの結果において、 予測を行う前の日が対応して反応しているニューロンと同じ座標を無理矢理勝者ニューロンとして その固定座標位置への強化を行う。[11]

この方法を用いることにより、パターン分類された気象の翌日の気象の学習を行う。 つまり、本来今日の日付を学習するはずの場所に パターン分類された翌日の気象を学習することにより、 似たような気象の翌日がどの気象になりやすいか学習することができるので、 それにより翌日の気象を予測することができる。 またこの方法を用いることで、気象予測を行うとき常に翌日の気象予測は 一つのニューロンのみを選択することができ、複数のニューロンの中から一つを選び出す必要がない。

しかし今述べた気象予測手法では、予測の段階で利用した記憶が予測日の前日のみであることから、 十分な知識や記憶を使わない予測をしている可能性がある。 前日のみの競合層上の距離によって評価するのではなく、 数日前からのパターン分類されたマップ上でのニューロンの座標を入力として、 その座標の推移のパターンを固定座標を持つニューロンへ学習させることで パターン分類されたマップの今日までの座標位置の推移のニューロンの位置と 同じ位置の気象のニューロンを調べることにより、 翌日の天気を予測することができる。



Deguchi Lab. 2013年2月28日