ニューロン間のシナプス結合には、興奮性と抑制性の二種類がある。
興奮性のシナプスはであるため、式(2.1)から、
そのニューロンが発火すると接続された他のニューロンの膜電位も上がり発火しやすくなるという性質がある。これを協調作用と呼ぶ。一方、抑制性のシナプスは
であるため、興奮性とは逆に一つのニューロンが発火すると、接続された他のニューロンの発火を抑える性質を持つ。この時、二つのニューロンは同時には発火しにくく、どちらか一方のみが発火する。これをニューロン間の競合作用という。つまり、協調作用は、相互に結合したニューロンの一つが、他のニューロンに自分と同じように興奮を促すものであり、競合作用は、他のニューロンに自分と逆の反応を示すように促すものであるといえる。
一般に、多数のニューロンで構成される相互結合したニューラルネットワークにおいても、同様の効果が各シナプス結合の正負によってあらわれる。ニューラルネットワークの情報処理過程においては、その情報は各ニューロンの興奮によって担われているため、ニューラルネットワーク上の興奮パターンが重要な意味を持つ。したがって、正のシナプス結合によってニューロン同士がともに興奮しようとする協調作用が、ニューラルネットワークの並列情報処理の基本的なダイナミクスとなる。[5]