カオスとは、無秩序、混乱、混純を意味とする。19世紀末から20世紀にかけてポアンカレの研究以来、カオスの概念が表舞台に登場してきた。[5] カオス現象は、火のゆらめきや潮の満ち引きなど自然現象のなかではごく自然にある現象である。 カオスの定義は研究者によって異なり、統一的な見解は得られておらず、この定義する事自体が一つの大きな問題であるということができる。本研究ではカオスを「決定論的力学系において生じる非周期的振動」とする。[3]
決定論的な立場では、系の状態が次にどのように変化するのか確定している。 つまり初期値が一つに定まれば未来の状態を予測する事ができる、ということを前提としている。 このとき、システムが線形であれば、解は非常に単純な振舞しか示さない。 しかし非線形であれば、解の挙動は非常に複雑かつ多様となる。 そして、カオス状態においては、系の未来の状態を全く予想する事ができなくなる。 カオスの特徴として、初期値の非常に小さな差が、将来の結果に多大な影響を生み出す事があげられる。このようなカオス現象は、人工物、自然物を問わず非線形システムでは普通にみられるものである。
具体的なカオスの例として式(3.1)のような系を考える。
式(3.1)の入力と出力
の特性を表したものが
図3.1 であり、
これはロジステック写像と呼ばれる一次元カオスである。
図3.2 、図3.3 はこの系の入力と出力の関係である。
図3.2 は
、図 3.3 は
と初期値をきめた。
このように初期値のわずかな違いが、系の振る舞いに大きく影響している。