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カオス

カオス(Chaos)は「無秩序」,「混沌」と日本語に訳され、 相対性理論、量子力学と並んで20世紀の科学の大発見の1つに数えられている。

カオスに関する研究は100年程前から、ポアンカレ、 アダマールなどの数学者によって始められた。 しかし、カオスの研究が大きく進展したのは、1970年代後半からである。 その理由はカオスが非線形システムに特有な現象であることが挙げられる。

今日の科学技術は、線形システムに関しては高度な理論体系が構築されており、 この線形理論体系に立脚して進歩してきた。 しかし、この世のほとんど全てのシステムは、自然システム、 人工システムを問わずに厳密には非線形である。 この時に様々な非線形システムを取り扱う際に暗黙に仮定されているのが、 いわゆる「線形近似」である。 すなわち、非線形システムを線形システムで近似して解析しようという発想である。 ところが20世紀の科学の進歩にともない、非線形性が本質的に重要で、 線形近似がもはや近似でありえない現象が見出されてきた。 このような非線形システムの典型的でかつきわめて重要な性質が、 カオスの概念である。

一般にほとんどの非線形システムは、 その振る舞いを明示する解析解を理論的に求めることができない。 この問題を解決したのがコンピュータであり、コンピュータの進歩にともなって カオスに関する研究も活発に行なわれるようになった[5]。

カオスの身近な例をあげると、一枚の木の葉が川をながれている時、 木の葉は渦に巻き込まれたり障害物に当ったりとその後の動きを予想するのは 困難である。 それは、木の葉の位置が少し変化しただけで、 その後の動きがまるで変わってしまうからである。 小さな変化が、後の大きな変化をもたらす。 これがカオスの特徴である。 つまり初期状態が少し異なるだけで、 時間が過ぎた後にはそれがとてつもなく大きな違いとなって現れる。

また、カオス状態への移行は、非常に微妙な外的変化に応じて行なわれる。 さらに、一つのカオス状態へ移行した後も、微小な揺動によって、 また別のカオス状態に移行することもある。 カオスとは、変わりやすさ(不安定性)をも特徴とするのである[6]。

つまりカオス現象とは「単純な決定論的法則が複雑な振る舞いを生み出す」 現象ということができる。



Deguchi Lab. 2012年3月9日