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: 謝辞 : mizutani : 考察・検討   目次

結論

本研究では一周期ごとに変化がある複雑な時系列として、 気温の変動を遅れ学習法を用いて 内部記憶をもつニューラルネットワークに 学習させる場合、 遅れ時間や、教師信号の一周期のサンプリングデータ数、ネットワークの規模 などのパラメータの違いが学習後の気温予測にどのような影響を 与えるか検証し、その決定法について検討した。

まず、ネットワークの素子数を内部記憶層を3個、中間層を2個と少なくし、 遅れ時間以外の学習パラメータを固定した状態で、 内部記憶を持つニューラルネットワークに 一ヶ月分の気温変動を、サンプリングデータ数を変化させ、 さまざまな遅れ時間によって学習させた。

その結果、データ数が2と3の場合には ある程度の予測が出来て、4以上の場合には学習が失敗し予測が出来ないことが 分かった。

また、データ数が3と4についてネットワークの規模を 変化させた場合に、ネットワークを構成する内部記憶層と中間層の素子数と 遅れ時間が学習後の気温予測に 変化をもたらすかを検証した。

その結果、予測値と教師信号との平均誤差が小さくなるのは ネットワークの規模は大きい方が学習が成功しやすく、 遅れ時間は少ない方がよいことが確認された。

以上のことから、 内部記憶を持つニューラルネットワークに 遅れ学習法を用いて複雑な時系列を学習させる場合、 教師信号の一周期のサンプリングデータ数はなるべく少なくし、 ネットワークの規模を大きくした状態で遅れ時間を少なくとった方が 学習が成功する可能性が高いことが確認された。 ただし遅れ時間については、学習が成功する場合は遅れが少ない方がよいが、 サンプリングデータ数やネットワークの規模との関係性が特に見られなかったため、 ある少ない遅れ時間で学習が失敗しても近くの遅れ時間で学習が成功する可能性がある。

今回の実験では 結合荷重の初期値、学習係数$\eta$、安定化係数$\alpha$は固定して実験を行った。 そのためこれらの学習パラメータと 遅れ時間やサンプリングデータ数、ネットワークの規模との関係は分かっていない。 今後の課題として、初期値や各係数を変更した場合についての 学習後の予測値の変化があげられる。 また、今回の実験で行っていない更に規模の大きいネットワークや、 他の月の気温の場合など、 さまざまなパターンで検証する必要がある。





Deguchi Lab. 平成21年3月6日