next up previous contents
Next: ニューロンモデル Up: ニューロンとニューラルネットワーク Previous: ニューロンとニューラルネットワーク   目次


ニューロン

ニューロン(neuron)とは,神経細胞のことで,人間の脳にはニューロンが数百億個以上あるといわれている。脳では,これらが複雑に結びつくことでネットワークを形成し,そこを信号が流れることで情報処理が行われている。

ニューロンの模式図は図2.1のようになっている。ニューロンの中心部には細胞体(soma)と呼ばれる本体,周りには入力信号を受けとる樹状突起(dendrite)という突起がある。そして,他のニューロンにつながる軸索(axon)が伸びており,その先のつなぎ目部分はシナプス(synapse)と呼ばれる。ニューロンによる情報処理の流れは,まず樹状突起で入力信号を受け取り,細胞体で処理を行って,何らかの出力信号を出す。その出力は軸索を通して他のニューロンに伝わっていく。そして,その出力信号はシナプスを介して他ニューロンの入力信号となる。このように,無数のニューロンが相互作用をしながら並列的に情報処理を行っている。

図 2.1: ニューロンの構造
\includegraphics[scale=1.0]{images/neuron.eps}

細胞体で具体的にどのような処理が行われているのかを説明する。まず,ここでいうニューロン間を伝わる信号というのは,電気信号である。そして,ニューロンはそれぞれある一定の電位を有している。ここで,ニューロンは外部から電気的な入力信号を受け取ると,その影響で電位が変化する。このとき細胞体は,その変化があるしきい値以上になると発火してパルス状の電気信号を出力する。つまり細胞体で行っているのは,入力信号を集計してその値をしきい値と比較し,発火して出力を出すかどうかを決めるという処理である。

次に,出力信号の他ニューロンへの伝わり方について少し詳しく説明を行う。あるニューロンが発火して発生した出力信号は,軸索を通じて他へ伝わっていくということは既に述べた。ここで重要なのは,その先の結合部分であるシナプスの働きである。シナプスは,信号を増大させたり減小させたりする働きがある。つまり,あるニューロンの出力信号はそのままの値で他に伝わるのではなく,シナプスによって調整されて伝わることになるのである。

そして,シナプスはその作用を常に変化させるという極めて重要な性質がある。これは,シナプスが信号をどの程度強めるのか弱めるのかという調整の仕方が時々刻々に変化するということである。つまり,生まれたときからその作用が一定なのではなく,時間とともに変化していくのである。その変化は,人がより上手く環境に適応できるような方向に変化していくと考えられており,脳を成長させていく。これはまさに私たちが学習と呼んでいるものである。学習とは,シナプスを変化させ,脳内のニューロンのネットワークを適切な形にしていく過程であると考えることができる。



Deguchi Lab. 2016年3月1日