図 4.1 のように, があるとき,
これから連想されるものをそれぞれ
とする.
例えば,X から連想されるものを知りたい場合,この X と
を
順に比較する. そして,
であれば,
が目的のものとわかる.
しかし,この方法では,X と等しいものがなかったり,
の記憶が破壊された場合は,出力を得ることができない.
また,n が大きくなるにつれ,比較する平均回数が増えるので,
検索時間も増加する.
そこで,これらの欠点を考慮した,ニューラルネットによる連想記憶について述べる.
連想記憶モデルは 1970 年代の始めに Nakano(1972),Kohonen(1972),Anderson(1972)
の 3 者によって同時期に,しかも独立に提案された.
3 者のモデルにはそれぞれ特色があるが,ここでは,特定のモデルに偏らずに,
3 者のモデルに共通するような基本原理について説明する[##
ニューラルネットにおける連想記憶とは,一般に次のようなものである.
図 4.2 のように,
N 個のニューロンに M 本の入力信号が加えられているニューラルネットを考える.
入力パターン
記銘する入力パターンと出力パターンとが一致\
自己相関記憶は次のような意味をもつ. いくつかのパターンを記憶した後,
どのパターンとも正確には一致しないが,どれかのパターン
本節の最初に述べたように,従来の方法では対処できない点がいくつかあった.
しかし,ニューラルネットにおける連想記憶では,次のような特徴を持っているので,
この点を解消することができる.
(3) は,記憶する複数の入出力パターンの組の情報がそれぞれ,
ニューラルネットのシナプス全体に分散され,
各々の情報が重なって記憶されることを意味する.
そのため,ニューラルネットが局所的に壊れても,
1 つの入出力パターンの組がまるごと記憶から失われることはない.
(3) は,(3) のようにシナプス全体に重なって
記憶されるために,記憶するパターンの組の数が増えても,
従来の方法で比較する回数が増えるように,
出力パターンを取り出すまでの動作は増えない.
(3) は,曖昧な入力パターンから正しい出力パターンを想起する能力の
ことである.
これは,ニューロンにしきい値作用を持たせた場合に持つ能力である.
自己相関記憶のところでも説明したように,
入力したパターン
=
(
:入力信号 j がとる値)
と出力パターン(想起パターン)
=
(
:ニューロン
i の出力信号がとる値)の組が複数個
あって,
上記の P 個の入力パターンの内の 1 つをニューラルネットに入力した時に,
対応する出力パターン(つまり入力パターン
に対しては
出力パターン
)を出力するように,
上記の入出力パターンを記憶することを連想記憶という.
また,連想記憶が学習する過程を記銘過程と呼び,神経回路網が入力パターンを
与えられることによって,何らかの出力をする過程を想起過程と呼ぶ.
している連想記憶のことを
自己相関記憶,異なる連想記憶のことを相互相関記憶とよぶ.
自己相関記憶では,入力パターンと出力パターンとの組を複数個記憶するのでなく,
単純に復数個のパターンを記憶することになる.
と
最も近い入力
をニューラルネットに与えるとする.
そのとき
そのものを出力すれば,パターン
から
パターン
を「連想」したことになる.
このことを人間の脳の機能にあてはめると,例えば,
複数の文字の形を覚えている状態で,
形の崩れた文字を見せたときに,その文字がなんであるのか,
記憶しているものから最も近いものを答えることに相当する.
に近いパターン
が連想する
出力パターン
を想起する.
Toshinori DEGUCHI
2004年 2月22日 日曜日 14時38分28秒 JST