next up previous contents
Next: 内部記憶を持つニューラルネットワークの学習[#hisaki##1#] Up: 第3章 学習法 Previous: 一般化デルタルール[#kiso##1#]

バックプロパゲーション[4]

中間層を持つ階層型のネットワークを考える。 同じ層の素子間に結合はなく, どの素子も1つ前の層からのみ入力を受け, 次の層へのみ出力を送るものとする。 このような,ネットワークの中間層に対して学習則を導くとき, 式(3.7)の tex2html_wrap_inline1156 (学習信号)の値は すぐには求めることが出来ない。 そのため,この学習信号を出力層から逆向きに順々に計算していく。 すなわち出力の誤差を前の層へ,前の層へと伝えていく。 これが,バックプロパゲーションの考え方である。 よって, ある層の素子 jtex2html_wrap_inline1156 の計算は, 次の層の素子 ktex2html_wrap_inline1166 を用いて

  equation171

と展開することができる。 式(3.1)より

equation183

となる。そして,これと式(3.6)を 代入すれば式(3.10)は

equation190

となる。 これがバックプロパゲーションのアルゴリズムである。

バックプロパゲーションは, いかなる重みの初期値からでも誤差が極小となる(最小ではない) ことが保証されるわけだが,一般に誤差曲面は極小値の近くでは 非常に緩やかな谷底をもつため,学習は非常に遅くなる。 しかし,式(3.3)の tex2html_wrap_inline1168 を大きくすると, 学習は振動してしまう。振動させずに学習を早めるため 幾つかの方法が提案されているが,例えば, 誤差曲面の傾きを結合荷重空間の位置でなく速度の変化に用いる, すなわち

equation198

という形の加速法がよく使われる。 ここで t は学習の回数を表わす。 また,重みが最初,すべて0であると,中間層の素子に個性が現れず, 中間層を用いる意味がなくなってしまう。 この対称性を破るために,重みに小さなランダム値を与ることが必要である。

3.2に バックプロパゲーション法のネットワーク図を示す。 バックプロパゲーションの特徴としては,

  1. 入力信号と正確な出力教師信号のセットを次々と与えるだけで, 個々の問題の特徴を抽出する内部構造が, 中間層の隠れニューロン群のシナプス結合として自己組織される。
  2. 誤差計算が出力方向への情報の流れと類似している。

が挙げられる。 すなわち,ある素子の学習に使われている情報は, 後の素子から得られる情報のみであり, 学習の局所性が保たれていることになる。 この学習の局所性は,人工的な神経回路型計算機を ハードウェア化する時の学習則に要求される性質で, 実際の生体における神経回路においては, tex2html_wrap_inline1156 といった学習信号が神経軸索を通って逆向きに伝わることはなく, バックプロパゲーションは実際の脳の学習則の 生理学的モデルにはなりえないことになる。 実際の脳の他層神経回路において,どのような学習則が用いられているのかは まだ分かっていない。

   figure207
図 3.1: バックプロパゲーション(誤差逆伝搬法)



Deguchi Toshinori
Tue Feb 23 15:28:33 JST 1999