カオスニューロンのカオス状態を制御するには, カオスニューロンの内部定数を外部から変化させることで可能である。 しかし,シナプス前抑制では,外部から手を入れることなく, 直接ニューロンのシナプス結合を変化させることにより, 制御を行うことが可能である。 そこで,本研究では,このシナプス前抑制による制御を採用する。
シナプスとは,神経細胞と神経細胞の結合部分のことをいい, 一般に,次式のようにモデル化される。
次に,シナプス前抑制とは, 実際の神経回路網にも観られるもので,図 6.2 のように, 興奮性シナプスのシナプス前終末を脱分極させ, 興奮性シナプスから放出される信号の量を制御することにより 抑制をかけるものである[12]。
これは, 式 (6.2) のシナプス結合荷重 w を制御するものと考えられる。 また,本来シナプス前抑制は,興奮性シナプスのみに働くものであるが, 本研究においては,興奮性,抑制性に問わず一様に働くものとし, 次式のようにモデル化した。
シナプス前抑制関数 は,比較的サーチアクセスの検索成功率が高い,
式 (6.4),
図 6.3 のような階段関数を用いた[2]。
のときカオス状態,
のとき
自己想起状態となる。
次節では,カオスニューロンにシナプス前抑制関数を使ったモデルを説明する。