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実験2の結果

素子数200, 300の場合の実験結果をそれぞれ図 5.3、図 5.4に示す。5.4.1節と同様の理由で、代表として1の比率が10,20,30,40,50%についての結果のみを示す。

図 5.3: 素子数200の学習成功パターン数
図 5.4: 素子数300の学習成功パターン数
\includegraphics[scale=0.9]{Data/10-20-30-40-50-200.eps}

\includegraphics[scale=0.9]{Data/10-20-30-40-50-300.eps}

素子数200, 300のどちらにおいても、完全学習の後に学習成功パターン数が減少するという傾向は、ほぼ同様であるといえる。

素子数200, 300の場合の各比率毎の最大完全学習数に注目する。 それらの値と、5.4.1 節の素子数100の場合での値をまとめたものを図 5.5に示す。

図 5.5: 各比率毎の最大完全学習数
\includegraphics[scale=0.9]{Data/peak100-200-300.eps}
図 5.6: 各素子数毎の最大完全学習数
\includegraphics[scale=0.9]{Data/sosi-peak-10-20-30-40-50.eps}
図 5.5の素子数100のグラフを見ると、 1の比率が極端に少ない場合や多い場合の方(10%や90%)は最大完全学習数が120程度であるのに対して、1の比率が均等に近い場合(50%など)では最大完全学習数が90程度となっていることが分かる。 1の比率が極端に少ない場合や多い場合はパターンとしては単純な組み合わせとなっており、それぞれの入力パターン同士は必然的に似通ったパターンとなるといえる。 パターン間の相関値(どれだけ似通っているかを数値化した値)が高い方がネットワークが記憶できるパターン数が多い事が過去の研究[12]で明らかになっていることから、1の比率が10, 90%の場合の方が50%付近の場合と比べて学習が成功しやすくなったと考えられる。 また、そのように1の比率が極端に少ない場合や多い場合の方が、比率が均等の場合よりも最大完全学習数が多い結果となっているため、グラフは中央がややへこんでいる形となっていることが分かる。このグラフの形は素子数200, 300の場合でも同様に見られ、特に素子数300の場合では、その形がより顕著に見られることが分かる。そのような、素子数の違いによる各比率毎の最大完全学習数の変化をより分かりやすく表すためのグラフを図 5.6に示す。

この図 5.6を見ると、素子数が増加するほど比率毎の最大完全学習数の差が大きくなっていることが分かる。特に、1の比率が10,20%の場合、素子数100においては他の比率とそれほど最大完全学習数の差はないが、素子数300においては差が大きくなっていることが分かる。つまり、5.4.1節で述べたような比率の違いによる学習への影響は、素子数が増加するほどより顕著に現れるといえる。 この性質はおそらく、5.1 節で述べたような素子数と最大完全学習数の比例関係によるものである。 過去の研究では比率50%での比例関係が見られたが、10%〜90%の各比率においても素子数を増加することで最大完全学習数は1より若干低い傾きに比例して増加したため、比率毎の最大完全学習数の差は大きくなったと考えられる。

しかし、図 5.6の比率10%の変化をよく見ると、比例のような直線状の変化とは多少異なる変化をしている。このことから、1の比率が極端に偏っている場合には、緩やかな指数関数的な変化を示す可能性や、乱数を用いたことにより実験結果に誤差変動が生じた可能性などが挙げられる。本実験結果による「10〜90%の各比率でも素子数と最大完全学習数は比例する」という考察をより確かなものとするためには、素子数を400,500とさらに増加させて同様の実験を行い検討していく必要がある。



Deguchi Lab. 2012年3月12日