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: マカロック・ピッツモデル : カオスニューラルネットワーク : カオスニューラルネットワーク   目次


ニューロン

神経細胞(ニューロン)(図 2.1)は、 動物の神経系を構成する細胞であり、情報の伝達と処理の役割を負う。

神経細胞は大きく分けて1.細胞体、2.樹状突起、3.軸索の3つの要素により構成される。

  1. 細胞体

    細胞体は神経細胞の中心であり、細胞核を包含する。神経細胞の活動に要する物質を合成し、供給する。

  2. 樹状突起

    細胞体の表面にある数十の突起を樹状突起と呼ぶ。

  3. 軸索

    細胞体から長く伸びた1本の突起が軸索である。軸索は途中で10ないし数百程度に分枝し、 その先端は多数の細胞体や樹状突起と接続している。

ある神経細胞の軸索の先端と、他のある神経細胞の細胞体ないし樹状突起とが接続しているとき、 その接続部分をシナプスと呼び、軸索側の細胞をシナプス前細胞、 細胞体ないし樹状突起側の細胞をシナプス後細胞と呼ぶ。

図 2.1: ニューロン
\includegraphics[scale=0.5]{eps_file/neuron.eps}

神経細胞の細胞膜の内外には膜電位と呼ばれる電位差があり、細胞外を基準($0V$)とすると 通常$-70mV$程度に保たれている。 外部からの作用により膜電位をある程度高くする(細胞膜の内外の電位差を小さくする)と、 膜電位は正に達した後、再び元の電位に戻る。 この現象を発火または興奮と呼び、細胞が発火(興奮)する臨界の電位の値を閾値という。

細胞の発火は閾値を超えさえすれば起こり、膜電位の時間的な変化は閾値の超え方によらず一定である。 このことは「全か無の法則」と呼ばれる。

発火した直後の細胞は発火し得ず、その期間を絶対不応期と呼ぶ。 絶対不応期を過ぎると細胞は再び発火できるようになるが、閾値は一時的に高くなり、 しばらく発火しにくくなる。その期間を相対不応期と呼び、その性質を不応性と呼ぶ。 相対不応期において、閾値が指数関数的に減少することが知られている。

膜の電位の変化は、まず局所的に発生するが、時間経過とともに軸索に沿って伝搬する。 そして軸索末端にまで到達すると、神経伝達物質と呼ばれる化学物質を末端から放出させ、 接続している他の神経細胞(シナプス後細胞)の細胞体や樹状突起の膜電位を変化させる。 シナプス後細胞の膜電位を高く(興奮し易く)するような神経伝達物質を放出するシナプスを 興奮性シナプスといい、逆に低く(興奮し難く)するようなシナプスを抑制性シナプスという。 神経細胞は多数の他の細胞からの入力(膜電位の変化)を受け、その総和により発火の成否が決定される。

シナプスは神経細胞間の接合部であり、シナプスを介してシナプス前細胞の興奮は シナプス後細胞に対して影響を与える。 このとき、受ける影響の程度は、接続しているシナプス前細胞によってそれぞれ異なる。 換言すれば、シナプスの信号伝達の効率(伝わり易さ)がシナプスによってそれぞれ異なるということである。 また、シナプスの信号伝達の効率は、常に一定なわけではなく、変化し得る。 この性質をシナプス可塑性と呼ぶ。

これらのシナプスに関する諸性質が脳の記憶や学習という機能の実現の一端を負っていると考えられている。



Deguchi Lab. 平成20年2月29日