この3つの条件を満たしてニューロンの最も単純で かつ興味深いモデルは、1943年にマッカロ(W.S.McCulloch)とピッツ(W.Pitts) が提案したものである。
神経細胞は多くの細胞から入力を受けて出力を出すことから、 多入力1出力の素子であると考えられる。 また他の細胞の出力はシナプス結合を介して入力として与えられるが、 この時にシナプス前細胞がシナプス後細胞へ及ぼす影響の強さは 各細胞によって異なると考えられる。
今、図 2.2 のように1つの神経細胞が n 個の細胞から 入力を受けているとする。 シナプス前細胞の出力を (1 i n) 、 それぞれのシナプスの結合の強さを と表すと、最も単純には i 番目の細胞からの影響は、 と表される。 このシナプス結合の強さをシナプス荷重と呼ぶ。
また、簡単のために各細胞からの影響 が単純に加算されたもの ( )が細胞の入力になると考えることにする。 この和がしきい値 を越えた時に細胞が興奮するものと考える。 さらに軸索は減衰のない伝送路であると仮定すれば、 このようにして生じた興奮がその細胞の出力になると考えられる。
以上の説明を式で表すと、式(2.1),(2.2)のように まとめられる。
式(2.1) は、他の細胞からの荷重が細胞に与えられ、 それからしきい値を引いたものが u であることを意味している。 この u を膜電位、もしくは内部ポテンシャルと呼ぶ。 式(2.2) は、細胞の出力は膜電位 u の関数として 決まることを表している。
入力 、出力 y の取りうる値としては、2値(0,1)のみを許す モデルや実数値を許すモデルがある。 2値モデルの場合、f(u) は式(2.3) で定義される階段関数になる。
このように、出力として0,1の2値をとるようなモデルを、 入力の線形和( )がしきい値( )を越えた時のみ 1を出力することから、特に「線形しきい値素子」モデルという。
連続値形モデルの場合 f(u) の形はいろいろなものが考えられるが、 よく使われるものに図 2.3 のような シグモイド関数と呼ばれるものがある。 シグモイド関数として代表的なものは、式(2.4) である[2]。