next up previous contents
Next: 4.2 カオスニューロンのダイナミクス Up: 第4章 カオスニューロン Previous: 第4章 カオスニューロン

4.1 カイアニエロのモデル

  ニューロンの数学モデル研究の上で、 歴史的に重要なモデルの一つに ``カイアニエロ(Caianiello)のモデル''がある。 本研究では、 このカイアニエロのモデルを用いてニューラルネットワークを構成する。 [4]

脳の基本素子であるニューロンの動作を、 ニューロコンピューティング研究の立場から一言で表現すれば ``多入力−1出力の非線形素子''ということになるが、 その実態は精密な生体分子機構に基づく複雑な高機能素子である。 したがってニューロンの数学モデルは、 定性的で単純なモデルから現実の生物のニューロンに近い定量的で複雑なモデルまで、 そのスペクトラムは広い。ニューロンへの多数入力の時空間加算、 ニューロンに特有のしきい値作用、不応性、疲労、可塑性など何を目的として、 どのようにモデル化するかが問題となる。

以下にそれらのうち一部を考慮した例であるカイアニエロのモデルを示す。

  equation124

x(t+1)
: 時刻 t+1 のニューロンの出力値、出力は、1(発火状態) または0(非発火状態)のいずれかである。また、時間は離散的に刻まれる。
g
: 単位ステップ出力関数

displaymath2066

N
: ニューロンへの入力線の総数。
tex2html_wrap_inline2080
: 時刻 t-r における j 番目の 入力値 tex2html_wrap_inline2086 (1または0の値をとる)が、 時刻 t+1 でのニューロンの出力値へ与える影響の強さを表すシナプス結合係数。
tex2html_wrap_inline2090
: 時刻 t-r でのニューロンの出力値が、時刻 t+1 でのニュ ーロンの出力値へ与える影響の強さを表す係数。生物のニューロンにおける不応性 (ニューロンの発火後、一時的にしきい値が増加する性質)に対応する。
tex2html_wrap_inline2046
: ニューロンのしきい値。

   figure143
図 4.1: 単位ステップ関数

ここで、これらのモデルは、いずれも図 4.1 で表される出力関数が 不連続な単位ステップ関数であり、 ニューロンの出力は、1又は0の2値である。 このようにしきい値を境にして、活動電位の発生、 非発生が不連続にわかれるダイナミクスを``全か無かの法則''と呼んでいる。



Deguchi Toshinori
1996年11月14日 (木) 12時50分06秒 JST