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5.2 複数のニューロンによる周期パルスの検出

次に二つのニューロンによる同期ニューラルネットワークよりも正確に周期パルスを 検出するために、図5.13の様なネットワークを考える。

   figure320
図 5.13: 複数のニューロンによる同期ニューラルネットワーク

この同期ニューラルネットワークはニューロン tex2html_wrap_inline1908 から tex2html_wrap_inline1910 、 ニューロン tex2html_wrap_inline1910 から tex2html_wrap_inline2198 と ニューロン tex2html_wrap_inline1908tex2html_wrap_inline2202 までをそれぞれ信号の到達時間を10として結合する。 閾値はニューロン tex2html_wrap_inline1908 が1でそれ以外のニューロンは2である。 個々のニューロンの出力は入力をs(t)で表すと

  equation328

  equation331

と表される。ニューロン tex2html_wrap_inline1908 は閾値が1であるので外部からパルスが入力されれば、 発火しパルスを出力する。このパルスは時間が10だけ遅れてニューロン tex2html_wrap_inline1910 に 到達する(式5.6)。つまりニューロン tex2html_wrap_inline1908 からニューロン tex2html_wrap_inline1910 に 到達する信号は時間が10だけ遅れた入力と等価である(5.7)。

  equation337

  equation340

ニューロン tex2html_wrap_inline2198 の出力は式5.8の様に表され、式5.9の 様に書き換えることが出来る。

  equation345

  equation348

同様にi番目のニューロンの出力は式5.10の様に表される。

  equation352

5.10の意味するところは、間隔が10のパルスが連続してi回 入力されなければ、ニューロンiは発火しないということである。

5.1の二つニューロンによる同期ニューラルネットワークとの違いを 調べるため、図5.13の同期ニューラルネットワークにおいてn=4とし、 周期4〜11の8通りの信号を入力する。 実験した結果を 図5.145.21に示す。

5.145.21を 図5.25.9と比べると、どちらもパルスが出力された 場合の入力の周期は5と10である。 しかし図5.155.20と 図5.35.8ではパルスが出力されるタイミングが に違いがあることがわかる。例えば入力の周期が10の場合を考えると、 図5.8ではパルスが出力し始めるのはt=10であるが、 図5.20ではt=30である。入力の周期が5の場合も同様に 図5.3より図5.15の方が遅い。

   figure374
図 5.14: 周期4

   figure383
図 5.15: 周期5

   figure390
図 5.16: 周期6

   figure397
図 5.17: 周期7

   figure404
図 5.18: 周期8

   figure411
図 5.19: 周期9

   figure418
図 5.20: 周期10

   figure425
図 5.21: 周期11

次に、周期が異なる信号を合成したものを入力とし、その出力を図5.225.24に示す。

   figure434
図 5.22: 周期7、12の信号の合成

   figure441
図 5.23: 周期10、13の信号の合成

   figure448
図 5.24: 周期10、8の信号の合成

5.225.24を 図5.105.12と比べると、この場合も パルスが出力されるタイミングが遅れていることがわかる。 図5.11ではt=10からパルスが出力されているのに対し、 図5.23でパルスが出力されるのはt=30からである。 また、図5.10ではt=24とt=70にパルスが出力されているが、 図5.22ではその様なパルスは出力されていない。

これらの結果においてパルスが出力されるタイミングが遅れる原因は、 ニューロンの数が増えて、図5.13の同期ニューラルネットワークの 最後のニューロン(ここではニューロン tex2html_wrap_inline2294 ) まで信号が到達するのに時間がかかる様になったためである。 同期ニューラルネットワーク全体の出力をニューロン tex2html_wrap_inline2294 の出力としてあるため、 ニューロン tex2html_wrap_inline2294 に信号が到達するまでには tex2html_wrap_inline2300 の時間が絶対に必要である。 これはどうしても避けられない遅れとなる。

また単体のパルスが出力されなくなったのは、パルス間隔が10の信号によって ニューロン tex2html_wrap_inline1910 は発火するが、続いてニューロン tex2html_wrap_inline2198 が発火するためには さらに間隔が10の信号が入力されなければならないからである。

このように、複数のニューロンからなる同期ニューラルネットワークでは、 二つのニューロンからなる同期ニューラルネットワークに比べ、 検出の信頼性が向上したが、その分出力が遅れる、と言える。



Deguchi Toshinori
1999年03月16日 (火) 16時39分45秒 JST