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考察・検討

6.1.2項より、 学習に有効な遅れ時間は教師信号の周期の 大体半分の周期で現れることが多かった。 これはどの教師信号の波形でも言えたため 教師信号の波形に依存しないと言える。

内部記憶素子数が変化すると学習が成功する遅れ時間の 幅が変わった。今回の実験の場合、内部記憶数が少ない時、 具体的には1から8ほどで、遅れ時間4から6の時に学習が成功した。 それ以上の数の内部記憶素子数の時には、遅れ時間が3でも 学習する傾向が見られた。 これも、どの教師信号の波形でも言えたことである。つまり、これらのことは 教師信号に依存しないと言うことである。 しかし、図6.3から、教師信号の波形によって結果に 多少のずれがあることが分かる。 全体的にパルス波の結果がよく、逆のこぎり波が結果が悪いと分かる。 また、正弦波と三角波の結果が似ていることが分かる。 同様にのこぎり波と逆のこぎりの結果も似ている。 これは、学習しやすい波形と学習しにくい波形があるのだからだと考えられる。 これにより、結果に差が出たと考える。 正弦波と三角波は変化の様子がほぼ同じである。そのため、学習結果も同じようなものになったと考える。 どちらも変化の様子は緩やかであるため、学習が成功しやすいのではないかと考える。 のこぎり波と逆のこぎり波では、増加するか減少するかの違いであり変化の様子は同じであると言える。 そのため、学習結果も同じようなものになったと考える。 これらの波形ように、増加もしくは減少していきそこから急激に変化するといった変化の様子のものでは学習成功が少ないと分かる。 つまり、緩やかな変化から急な変化となる波形では学習が成功しにくいのではないかと考える。 パルス波は、他に似ている波形がないため他の結果に似るということはなかったと考える。 この波形での変化の様子は、急激な部分はあるのだが、値としては0か1かの2値であるため学習しやすいのではないかと考える。 これらのように、似たような変化の波形の学習結果は似たような結果になるのではないかと考える。 しかし、内部記憶素子数によっての学習成功回数の変動はどの波形でもほぼ同じであるため、 内部記憶素子数はどの波形の学習にも同様の影響が及ぶと考えられる。

つまり、どんな教師信号に対しても、内部記憶素子数が変化することによっての学習への影響は、遅れ時間の範囲だけであると言える。 素子数が少なくても学習できる遅れ時間は存在するので、多くする必要はあまりないと言える。少なすぎる場合には 教師信号によって学習できる遅れ時間が存在していないこともあったので学習できない可能性が出てくることになる。 このことから、少なくしすぎるのも問題があると考えられる。

6.4から、中間素子数が変化すると、学習成功回数にも変化が見られた。 中間素子数が小さい時には学習成功回数が少なかったが、 増やすにつれ学習成功回数が増えていった。 しかし、ある程度の素子数で学習成功回数の増加は頭打ちをする結果となった。 つまり、中間素子数は少なすぎると学習が成功しないという問題が起きるが、 一定数を超えれば、多くしてもそれ以上は学習結果に大きな変動を与えないと言える。

これらの結果も内部記憶素子数の時と同様に、 教師信号の波形によって多少ばらつきがあることが分かる。 しかし、これも中間素子数によっての学習成功回数の変動はどの波形もほぼ同じであるため、 どの波形の学習に対しても同様の影響が及ぶと考えられる。

これらのことから、各素子数の学習への影響はどの波形に対しても 同様であるといえるが、各素子数での有効な遅れ時間は波形によって 違うと分かった。

6.2.2項より、 各素子数、遅れ時間によって 計算時間が線形に増えていくのが確認できた。 効率を良くするために計算時間を短くするには 内部記憶素子数、中間素子数をともに少なくし、 遅れ時間を少なくして学習させるのが最も良いと言える。 また、図6.4からパラメータ別の計算時間の変化の割合が分かった。 この結果で、中間素子数の変化の割合が一番大きかったため 中間素子の数を抑えたネットワークで学習させるのが一番効率の良いのではないかと考えられる。 また、内部記憶素子数の変化の割合に比べて遅れ時間の変化の割合は小さいため、状況によっては 内部記憶素子数を減らし、遅れ時間を増やした方が効率が良くなるときもあるのではないかと考える。

学習の効率というのは、学習が成功する上で考えるものであるので、 6.1.2項とあわせて考える。すると、 遅れ時間は小さすぎても、大きすぎても学習しないため学習できる範囲で 小さい遅れ時間を選択するのがいいと考える。 成功する遅れ時間というのは教師信号の半周期以降からでてきているというのが 分かったため、半周期ほどの遅れ時間で遅れ学習を行うのが良いのではないかと考える。 内部記憶素子数は、多くすると学習できる遅れ時間が増えるが それに伴って計算時間も増えるので そこまで多くする必要はないと考える。 中間素子数は少なすぎると全く学習しないため、 ある程度の数は必要となる。 それ以降は、学習結果に影響があまりないため、 ただ時間がかかるだけというものになってしまい効率が悪いと言える。 よって、そのある程度の数で学習を行うのが最も効率が良いと言える。 具体的には中間素子3つ程であったが、教師信号の波形によって多少上下するので 注意が必要であると言える。



Deguchi Lab. 2011年3月3日