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モーフ

  モーフとは、数値やデータベースのような抽象的なオブジェクトではなく、丸や四角など、我々の目に見える“姿”を持った具象的なオブジェクトのSqueakシステムにおける呼称である。ウィンドウやアイコンなどもみんなモーフである。 単に表示されているだけでなく、ビューワ でその中身を観察したり、スクリプト を書くことで新しい動きを追加することもできる。 もとは、1990年代初頭にSmalltalkにインスパイアされて作られた「SELF」というオブジェクト指向環境向けに考案されたものであるが、当初ビットマップ画像しか扱えなかったSqueakにマルチメディア機能を強化する目的で、開発の比較的早い時期に、Squeakプロジェクトに合流したオリジナルの考案者自らの手で移植され組み込まれた。簡単には、互いに連携が可能な仕組みを持つドロー系ソフトの基本図形オブジェクトのようなものを想像してもらえればよいと思う。

Squeakには、これらモーフに対して、動きや性質を変化させる指示をプログラムとして付加できる、非プログラマ向けのスクリプトシステムが「eToys」として提供されている。ユーザーは、デスクトップをキャンバス代わりにして、モーフを好きなように配置し、それらに動きをあたえることである種のソフトウエア作品を組み立てることが可能である。こうして作られた作品は、もちろん、仮想イメージに保存することは可能だが、ひとつの作品の保存場所に巨大な仮想イメージをそのつど用いるというのは、現実的ではない。そこで、Squeakのプロジェクトには、デスクトップの様子をそのままファイルとして出力し、別の仮想イメージでそれを読み込み再現できるような機能が追加さた。

一見、単なる仮想デスクトップに過ぎないSqueakのプロジェクトだが、 Smalltalk言語によるソフトウエア開発ではチェンジセットと連携することで、また、eToysによるデジタル創作においては、作品のキャンバス代わりになることで、実は「プロジェクト」という名に相応しい機能を提供しているわけである。[5]



Deguchi Lab.