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3.2 ニューロンの機能

ニューロンは細胞の一種であるから、細胞の内部は細胞膜によって外液と隔てられている。 神経細胞の細胞膜の内外ではつねに電位差があり、この電位差を膜電位とよぶ。 細胞内部の電位は、細胞外部の電位を基準にすると、通常 -70mV 程度であり、これを静止電位とよぶ。 静止電位は、細胞膜のイオンチャネルの働きによって、 K tex2html_wrap_inline1189 イオン濃度は細胞内のほうが高く、 Na tex2html_wrap_inline1189 イオンと Cl tex2html_wrap_inline1193 イオンの濃度は細胞外のほうが高いことにより生じる。 [2]

膜電位を外部からの作用で正方向に変化させ、 -50mV 程度にすると、膜のイオン透過性が変化し、膜電位が正にまで達して、再び元の電位に戻るという現象が起こる。 膜電位が、このようにインパルス状に変化したとき、細胞が興奮した、または発火したという。 膜電位の変化は、始めは膜の局所的な部分で生じるが、やがて膜の興奮部位は軸索に沿って伝搬していく。 膜電位を変化させたとき、膜が興奮する電位の臨界値を閾値という。 発生するインパルスはほとんど同一の波形を有し、閾値を越えれば完全なインパルス波形になる。 これを``全か無かの法則''という。 また、軸索には波形整形作用があり、長い軸索を伝搬しても波形は歪んだり減衰したりしない。 インパルスの形や大きさが入力に対してほとんど変化しないことから、神経回路網において情報を担うのは、インパルスの波形ではなく、頻度であると考えられる。 したがって、一般に、信号の強度は、細胞の発火頻度という形でコーディングされていると考えられる。

しかし、細胞には一度発火するとその直後( 0.5ms 程度)には絶対発火しない期間(絶対不応期)と、絶対不応期を過ぎてから、閾値が通常より高くなって発火しにくくなる期間(相対不応期)があり、発生するインパルス頻度には上限ができる。 また、他の細胞からの入力がないにも関わらず自然に発火する自然発火があるが、そのメカニズムは分かっていない。



Deguchi Toshinori
1996年10月08日 (火) 12時41分40秒 JST