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8.3 改良方法

 

全節で,内積値の大きいパターンとそれ以外のパターンに分けて, 失敗した時の振舞いの特徴を考えた。 ここでも,この 2 通りの改良方法について考える。

まず,内積値の大きいパターンについて考える。 失敗理由に,自己相関学習の相互干渉項が大きすぎるので, 正しい学習ができていないことが考えられる。 これを改良するには,学習方法を変える必要がある。 この相互干渉を打ち消して学習させる方法に,直交学習[9]がある。 しかし,この方法は相関学習に比べ複雑になる。また,カオスニューロンの パラメータやシグモイド関数の傾斜の変更が必要になると考えられる。

正しい学習ができているかどうかは,式 (5.4) の右辺に階段関数をかけ, 正しい想起ができるかを調べればいいと考えられる。 もし,正しい想起が行なわれているようであれば, カオスニューロンのパラメータを変えて,シグモイド関数の傾斜を急にし, 相互干渉項の影響を小さくする方法が考えられる。しかし,あまり急にしすぎると, カオスニューロンの意味をなさなくなることや, 不応性やしきい値の項などの影響をどうするか考える必要がある。 あるいは,シナプス前抑制のしきい値以下になった時, シナプス結合の項のみを残し,階段関数にかける方法も考えられる。 しかし,別のパターンを想起してしまいカオス状態に戻す場合, 残りの項の値をどうするかということも,考えなければならない。

次に,それ以外のパターンを使って失敗した時に起こる, 周期的な振舞いをどのように改良するかを考える。 そのためにまず,周期的になる前になるべく検索パターンを見つけることを考える。 シナプス前抑制のしきい値を大きくすれば,自己想起状態になる可能性が高くなる。 しかし,図 8.2 のようにうまくいかないことがある。 そこで,検索パターンと出力パターンとの距離が, 一つ前の距離より小さくなった時にも,自己想起状態になるよう, シナプス前抑制の制御を変更する。 ただし,距離が 0.5 以上の時は,反転パターンが想起される可能性があるので, 距離が 0.5 未満の時のみとする。 しかし,この変更を行なっても周期的になる可能性があるので, 周期的な振舞いになった時は,さらに強いカオス状態になるようにする。

   figure970
図 8.2: 出力パターンとの距離の時間による変化(gs の変更による比較)

以上のように,欠点の改良方法を考えた。 本研究では,内積値の大きいパターンを成功させるための改良は, サーチアクセスのシステム自体を大きく変更する必要があるため, シナプス前抑制の制御部分の変更のみで成功率を高める可能性のある, 周期的な振舞いを改良する方法を行なう。



Deguchi Toshinori
1996年09月05日 (木) 11時50分24秒 JST