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第1章 序論

  生物の脳,神経回路網をモデルとしたニューラルネットワークは最近, 画像処理,パターン認識の分野で活躍している。

本研究では, そのニューラルネットワークをより生物に近付けようとして考え出された, カオスニューラルネットワークを用い,サーチアクセスを実現する。

サーチアクセスとは,あらかじめ学習させた複数のパターンの中から, 検索したいパターンの特徴を入力することにより, その特徴を持ったパターンを検索する方法である。 普通のニューラルネットワークでは,学習させたパターンの一つにのみ収束するため, 他のパターンを出力することができず,検索することができない。 そこで,非周期的に学習パターンが出力される, カオスニューラルネットワークを用いることで対処している。

本研究室でのこれまでのサーチアクセスに関する研究[1, 2, 3] では主に図 1.1 のような, サーチアクセスが比較的成功しやすい特殊な四つのパターン,「バツ」,「三角」, 「波」,「星」を相関学習によって学習させ,サーチアクセスの特性を調べている。

   figure43
図 1.1: 特殊なパターン

また, パターンの相関内積と検索成功率の関係についても調べている [3, 4, 5]。 相関内積とは,パターンの要素の黒を 1,白を -1 とした時, 各成分ごとの積をとりその和をとったもので, 普通のベクトルの内積の計算と同じである。 また,内積値が 0 になる場合,そのベクトルは互いに直交しているように, パターンの相関内積が 0 になることを直交するという。 学習させるパターンの白黒を同数にし, カオスニューロンの内部定数を一定にしてサーチアクセスを行い, 相関内積の関係を調べた結果, 直交より少しずれているパターンは成功しやすく,直交していたり, 大きくずれているパターンは成功しにくいということがわかっている。

そこで,本研究では,以上のことを考慮して, 次のような事項について調べる。

   dingautolist53

これまでの研究では,学習パターンの要素の白黒を同数にして調べていたので, pzd192 の場合についても同様に検索可能であるかを調べる。 ただし,それぞれのパターンの条件を合わせるために, 直交したパターンのみで調べ比較する。 また,pzd193 については, 図 1.1 のパターンでは一部調べているが,ほとんどの場合, この特殊パターンでの検索が成功しやすい値に内部定数を固定し, この定数についてはあまり検討されていなかった。 また,pzd192 による検索では, パターンごとに適切な値に変更する必要が生じてきたこともあり, 本研究ではパターンごとに成功しやすく検索時間が短い,最も適切な定数値を求め, 学習パターンと内部定数の関係について検討する。

本論文では,まずサーチアクセスモデルを導出するまでの理論について説明する。 また,サーチアクセスのシミュレーションプログラムについて, ウインドウを開いてマウスで操作できる等の改良を施したので, そのことについても説明を加えている。 最後に,検索方法や結果について説明とまとめを示す。



Deguchi Toshinori
1998年03月12日 (木) 16時16分01秒 JST