: 安定性
: sysconh16
: 最小実現
前節で最小実現の性質について幾つか説明した.本節では伝達関数行列が与えられたとき,その最小実現を具体的に求めるためのアルゴリズムについて説明する.
最小実現のアルゴリズムT(Mooreの方法)
- 与えられた伝達関数を次の形に変形する.
ただし分母の
は,
の各要素の分母の最小公倍多項式であり,
は
の定数行列である.
を求める.(容易に確かめられる?ようにシステム
は一つの可制御な
次元の実現である.)
- 2.の
が可観測ならば最小実現,そうでなけれはシステム
を正準分解して,可制御可観測なサブシステム
を求める.システム
には不可制御なサブシステム
は存在しない.したがってまず
の任意の基底を
とし,ついで
が
の基底となるように独立なベクトル
を選び,
とおくと,教科書3.4節の結果より
を得る.さらに
とおくとシステム
が一つの最小実現である.
例4.3 伝達関数行列
が
で与えられるとき,これの最小実現を求める.
上記のアルゴリズムTにしたがって計算すると,
-
であるから
となる.また例4.2より
である.
-
- システム
を正準分解する.ただし,前述のアルゴリズムTの記述にもあるように,システムは可制御であるから,可観測性について分解すればよい.したがって可観測性行列
を求めると
であるから,
の基底を求めるため
を計算すると
となり,結局
となる.したがって
の基底として
ととることができる.残りを適当に選べば
等とすることができる.これにより
となる.よって
が一つの最小実現となる.
最小実現のアルゴリズムT' アルゴリズムTに双対なアルゴリズムとして,アルゴリズムTの手順2において次のシステム係数を取ることが考えられる.
このときシステム
は,可観測な
次元の実現となるが,これを正準分解して,可制御可観測なサブシステムを求めればよい.
であればアルゴリズムTを利用し,
であればアルゴリズムT’を利用すれば,扱うシステムの次元数が小さくなるので計算が容易である.
つぎに限定的ではあるが,
の各要素の極がすべて実数の単極の場合に適用可能な,最小実現を直接求めるためのアルゴリズムを示す.
最小実現のアルゴリズムU
の根
を求める.
-
を求める.
-
および
となる
を求める.ただし
及び
は
及び
の行列である.
- システムの係数行列を
とする.
例4.4 例4.3の最小実現をアルゴリズムUにより求める.
伝達関数行列は
であるから
-
より,明らかに
である.
-
-
,
である.これより
を
行列で,
を満たすように選ぶ.例えば,単位行列を利用して
とすることができる.また
は
行列で
を満たせばよい.これについては,例えば
と選べばよい.
-
となる.
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endo
平成16年6月30日