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結果と考察

アンケートを集計した結果から、それぞれのコンテンツの操作方法に関する特徴を以下にまとめる。 アンケート集計結果を図 5.2から図 5.6に示す。 このグラフは、各項目ごとにそれぞれの操作方法に対する評価の内訳を百分率で示したものである。

図 5.2: 学習のしやすさ
\includegraphics[scale=0.85]{gakusyu.eps}

図 5.3: 効率性
\includegraphics[scale=0.85]{koritu.eps}

図 5.4: 記憶のしやすさ
\includegraphics[scale=0.85]{kioku.eps}

図 5.5: エラー発生率
\includegraphics[scale=0.85]{era.eps}

図 5.6: 主観的満足度
\includegraphics[scale=0.85]{manzoku.eps}

(1)スライダー(縦)+ ボタン

学習のしやすさ、効率性で高い評価を得た。

図 5.2のグラフを見ると操作1における学習のしやすさは3以下の評価をした人がおらず、 5と4の評価をした人の数では、8割に近い人数に達していることがわかる。 スライダーとボタンはそれぞれ一般的に広く使われているので、 長さと重力の値を変更しようとした際に迷うことはなかったと思われる。

図 5.3より、効率性においても操作1はほとんどが3以上の評価であり、 学習のしやすさ同様に4と5の評価が8割近く存在することがわかる。 操作は全てマウスによって行うことができ、カーソルを合わせてクリックするという操作と、 ドラッグするという操作のみを必要とするところが効率性の評価を挙げたのではないかと考えられる。

図 5.4より、記憶のしやすさの項目においては4、5の人数は7割程度となり、 操作方法全体の記憶のしやすさで見ると、 5や4の評価はあるものの他の操作方法ほどの数は得られず、 中には2などの評価もあり、 操作1、2、3は僅差ではあるがその中でも最も低い評価を受けたという結果になった。 現在入力している値の分からないスライダーと、 入力できる値が表示されたボタンという組み合わせ方が視覚的にはっきりしとした分かりやすさを提示できず、 記憶のしやすさに影響したのではないかと考えられる。

図 5.5のエラー発生率の評価では、全体で中間的位置の評価となった。 図 5.6の主観的満足度では、2以下の低評価は付けられていないが、 5、4の評価の数に対して3の評価が半数以上を占めていることがわかる。 エラー発生率の評価については、操作方法1が一般性が高く、 標準的な操作方法であったことが、エラー発生率を下げる特別な要因を作らなかったためであると考えられる。 主観的満足度においても同様の理由から意外性等のエンターテイメント性を感じられず、3の評価を増やし、5または1を減らす結果になったのではないかと考えられる。

(2)ボタン + ボタン

エラー発生率で4、5の評価を最も多く得られた。

主観的満足度では5と評価した人が一人もおらず、全体と比較するとあまり良くはない結果となった。 しかしエラー発生率のグラフ図 5.5でその内訳を全体と比較すると、 4、5の総数は最も多いが、同時に他に比べて最も悪い1の評価が多く付いている。 ボタン入力ではマウスカーソルをボタンの上に合わせ、クリックするだけで入力が完了する。 このシンプルな手法に頼っていることが評価を上げたと思われるが、 それはクリックするだけでカーソルの合った場所の値を入力してしまうということでもある。 ボタン操作を2つ分組み合わせ、なおかつボタン間の間隔に十分な余裕をもつ配置ではないことが、 低い評価を得たことにつながっているのではないかと考えられる。

主観的満足度では、図 5.6を見ると5と評価した人はいないが、 4と3が評価の7割を占めており、全体と比較すると悪い結果ではないことがわかる。 ボタンは離散的な値が直接ボタンに表示されているため、 現在入力している細かい数値を認識できる点がスライダー等に勝る点であるといえるが、 入力できる数値は10に限られており、操作も単調的であることが5の評価を得ず、 4、3の評価にとどめたのだと考えられる。 実際にアンケートの自由記述には、操作方法として、ボタンをクリックするものより、 スライダータイプのものでハンドルを動かす方が好みだ、と答えている人がいる。

学習のしやすさでは、図 5.2を見ると、5と4の総数では他と大きな差はなく、 ある程度得られていることがわかるが、その一方で1の評価が付いている。 数としては1の評価をした人は1割程度しかいないが、 1の評価を得ているのはこの操作方法2と操作方法3だけであるので、 全体的に比較するとあまり良い結果ではないようである。 操作画面に20ものボタンが並んでいたことになるので、同じものが数多く並んでいると、 1つ1つはマウスクリックという簡単な操作しか求めていなくても、 視覚的な混乱を与え、操作法を理解することに時間を要するようになり、 評価を下げる結果になったのではないかと考えられる。

効率性については、図 5.3を見ると、5の人数が全体で2番目に多いことになる。 しかし4と評価した人が他ではある程度いるのに対し、ここでは少ないことがわかる。 1の評価はないものの、2の評価が2割を超えて存在し、全体と比較すると順位は中間に収まるといえる。これは今回のような値を頻繁に変更する場面においては、 ボタン入力操作に効率性を感じられなかった人が多かった結果であるといえる。

(3)キーボード + キーボード

学習のしやすさ、効率性、エラー発生率、主観的満足度において、全て低い評価を得た。

学習のしやすさでは5の評価の人数は操作4と同人数であるが、 5と4を合わせた人数で見ると全体で最下位となる。 また、1の評価の人数が他の操作方法より多い。 キーボード入力窓と、「set」ボタンの組み合わせを最初に見たとき、 直感的に操作できるようなインターフェースに比べ、視覚的な情報による理解度が少ないため、 理解に時間を必要とし、評価を下げたのではないかと考えられる。 しかし図 5.2を見ると、2や1の評価が4割近くあるのに対して5の評価も4割近くあることがわかる。 個人によってキーボード入力とそのセットボタンに関する理解には違いがあるいえる。

記憶のしやすさでは操作方法1、2同様に2の評価も1割ほど見られるが、 5と4を合わせた人数では全体の中間に位置する評価であるといえる。

学習のしやすさでは低い評価を得たが、記憶のしやすさについては、 操作画面が視覚的に特殊なところはなく、シンプルな配置であり、 操作回数も多くないことが高い評価へつながったのではないかと考えられる。

効率性では、図 5.3より、 5の評価が他の操作方法に比べると操作4に次いでかなり人数が少ないことがわかる。 3の評価が半数を占めており、1の評価も多く見られるのが操作3の特徴である。 キーボード入力操作とマウス操作の両方を要するものの、操作は多くない。 キーボードからの数値の入力に関しては、個人差の出る部分であると思われ、 そのことが結果に反映された可能性が考えられる。 アンケートの自由記述には、数値を入力する方法は面倒だと感じた、という意見があった。 また、自分の変えたい値に自らいくらでも変えることが可能なので、 厳密な変化を知りたいときに、曖昧なスライダー等より早いと考え、 効率性を高く評価した人がいるとも考えられる。

エラー発生率では、図 5.5より、5の評価は他より高いが、 1の評価も高くなっていることがわかる。変えたい値を直接指定でき、 入力完了には「set」ボタンのクリックしか要しないことがエラー発生率の高い評価へつながったと考えられるが、 自分で全て入力できるということはそれだけシステムに人間が関与することが多くなるということを意味するため、 コンピュータのスキルが中級以上の人はそれに対してエラーが起こりやすく感じたのだと考えることができる。

主観的満足度では図 5.6を見ると、5と4のいずれの評価をした人も少なく、 5と4を合わせた人数も2割程度となっている。 さらに、他の操作方法では最低でも2の評価までしかされていないが、 この操作方法3については、1の評価が2割程度あるのがわかる。 効率性で低い評価をした人がここでも低く評価をしたと考えられる。 また、アンケートの自由記述では、キーボードに触らずに操作できるのが好みだ、 と答えている人がいる。

(4)スライダー(横)+ 表示部付き上下ボタン

学習のしやすさ、記憶のしやすさ、エラー発生率において高い評価を得た。

学習のしやすさでは図 5.2を見ると、5の評価の人数は操作方法3と同人数となり、 全体では低い値であるが、5と4を合わせた人数で見ると8割を超えることがわかる。 スライダーと表示部付きの上下ボタンは(1)同様に 一般的に広く知られた馴染みのあるインターフェースであると考えられ、 それが高い評価につながったと考えられる。

記憶のしやすさでは、図 5.4を見ると、 5の評価の人数は全体で最も少ないことが分かるが、5と4の人数の合計では、 操作方法5に次いで多く、8割に近い人数に上っていることがわかる。 また、2以下の低い評価が付いていないことからも、全体で高い評価を得ていることがわかる。 一般的な感覚として、 スライド等で値が連続的に変わっていく方法は誰においてもイメージを結びつけやすく、 飲み込みやすいことが理由として考えられる。

エラー発生率では、図 5.5を見ると5と4の人数が全体で比べると多く、 5から3までの評価の人数で見ると操作方法4が最もエラー発生率で高い評価を得ていることがわかる。また、1の評価を得ていない操作方法はこの操作方法4だけである。 スライダーと上下ボタンはマウス操作のみを必要とし、 スライダーはドラッグ、上下ボタンは通常のボタン入力機能に加え、 長時間押し続けると値が連続的に変化するという仕組みになっているため、 操作回数は少なく済み、エラー発生率において高い評価を得たと考えられる。

効率性では、図 5.3を見ると、 5の評価が全体と比べると操作方法3に次いで少ないことが分かる。 5と4の人数で見ると7割を超えるが、 全体では2番目に効率性において低い評価となっていることがわかる。 これは、片方の操作方法がスライダーであるのに対して、もう一方がボタン形式となっており、 クリックするという操作を求めるもので、 連続的に値を変化させられるという点では発想の似た2つのインターフェースにおいて 異なるマウス操作を要したことが評価を下げる要因になったのではないかと考えられる。

主観的満足度では、図 5.6を見ると、 5と4の人数は全体に比べると操作方法5に次いで多い人数となっているが、 一方で2の評価をした人が2割いることがわかる。 さらに、同じスライダーを1つまたは2つ設置している操作方法1、 操作方法5のいずれも高い評価を得ているのに対し、操作方法4では低い評価の人数が目立つ。 原因の1つとしては、効率性で全体に比べ高い評価を得られていなかったことが関係しているのだと考えられる。 組み合わせの違うインターフェースを設置しているのはこの操作方法4の他には操作方法1であるが、 操作方法1のインターフェースは、それぞれの操作方法や見た目の違いがはっきりしている。 また、一般性が特に高い2つであることも特徴的である。 操作方法4では、スライダーの数値の変化が操作する側にとって曖昧で、 変えたい値に指定できないことに対して、表示部の付いた上下ボタンでは、 0.5刻みで変更が可能であり、正確さ、曖昧さ等に同じ画面上における一貫性がない。 これが被験者に不満や混乱をもたらし、 少なからず主観的満足度の評価を下げる原因になったのではないかと考えられる。 さらに、操作方法4においては、スライダーは横向きで設置されており、 上下ボタンでは、矢印のボタンが縦向きに配置されている。 この向きの違いが、毎回の操作を煩わしく感じさせていた可能性があると考えられる。 しかし、全体で見たときに5と4の評価が多かったことは、表示部付き上下ボタンが、 リアルタイムで数値が分かることや、操作方法3と違い、 キーボード入力を要求せずに細かい値を指定できるという操作方法に対するものであると考えられる。

(5)スライダー(縦)+ スライダー(縦)

学習のしやすさ、効率性、記憶のしやすさ、主観的満足度において高い評価を得た。

学習のしやすさでは、図 5.2を見ると、 5と4の評価を合わせた人数が8割を超えており、他の操作方法より人数が多いことがわかる。 しかし、同じくスライダーを設置した操作方法1の方が5の評価の人数が全体で最も多く、 また、操作方法5では2の評価があるのに対して操作方法1では最低評価は3である。 しかし、スライダーを設置しているもう一つの操作方法4の評価は上回っていることが分かる。 さらに、同じインターフェース2つを使っているという点が共通している操作方法2と比べると、 操作方法5の方が評価が高い結果となっている。 これらのことから、操作方法5は(2)同様に、同じインターフェースを組み合わせたことにより、視覚的に理解を遅らせるような影響を与えたと考えられる。 しかしスライダーはボタンほど数が多くないため(2)ほどの視覚的なわかりづらさを与えることはないと考えられる。 また今回のコンテンツではスライドするタイプのインターフェースの方が、最初に見たときに直感的にわかりやすかったといえる。 以上の理由から、片方をスライダーにした操作方法4よりも高い評価を得たのではないかと考えられる。

効率性では、図 5.3より、5の評価の人数が5割を有に超えていることがわかる。 また、3以下の評価が付けられておらず、全体では最も効率性がよい操作方法となっていることがわかる。 スライダーはマウスカーソルを合わせてドラッグするという短い操作で済み、 両方のインターフェースが同じ操作方法で操作できたため、高い評価を得られたと考えられる。 記憶のしやすさでは、図 5.4より5の評価は5割ほどの人数になるが 全体では操作方法4に次いで5の評価の人数が少ない。 しかし5と4の評価を合わせて見ると、操作方法5のみが8割を超える人数となる。 また、3以下の評価を付けた人がいないので、記憶のしやすさにおいて最も高い評価を得たということになる。 これは既に他の操作方法の考察でも述べたように、スライダーが今回のコンテンツにおいて、 直感的に操作できるインターフェースとして適していたことが理由であると考えられる。 また、初めて操作する時に一度ハンドルをスライドするだけでその操作方法の全てを使用でき、 インターフェースを理解できることが2回目に思い出すとき、 ボタンがいくつもあるもの等より操作方法を思い出しやすいと考えられる。

主観的満足度では、5の評価の人数、4の評価の人数共に、 他のどの操作方法よりも人数が多いことがわかる。 これは、スライダーの値の変化がコンテンツの動作の変化と連動して見えることや、 直感的である操作方法が一般的に好まれる傾向にあることが現れているのだと考えられる。 アンケートの自由記述では、ボタンよりもハンドルの方が楽しくて好きだ、という答えや、 教育用コンテンツにおいて直感的に操作できることが、 漠然とでも理解できることにつながって良いように感じる、などの答えがあった。

エラー発生率では高い評価とはならなかった。 図 5.5より、グラフの構成が操作方法1とよく似ていることがわかる。 違う点は、5と4の評価を合わせた人数が操作方法5の方が多いこと、 その分操作方法1では3の評価が多くを占めているが操作方法5ではそうではないという点である。 操作方法が全く同じインターフェースを組み合わせたという点において、 操作方法を使い分ける必要がなくなり、また、 エラー発生率において2以下の評価が多く付いたボタンがなくなった分高くなったとも考えられる。 しかし操作方法5においてエラー発生率が低く評価された1番の原因は、 スライダーでは自分の入力したい値に定めて細かい値を入力することができないことであると考えられる。 アンケートの自由記述では、操作方法5において、目盛りが全て書かれていればなお良い、 という答えがあった。 コンテンツで使用したスライダーは全て下限と上限の値と、 細かい刻みのみの表示であったので、よりエラー発生率の評価が低くなったとも考えられる。



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Deguchi Lab. 2014年2月25日