「決定論的システムにおいて起こる確率論的なふるまい」[3]がカオスである。「決定論的システム」とは「初期条件によって以後の運動が一意に定まる系」のことであり、「確率論的なふるまい」とは「法則性がなく、不規則であり、偶然によって支配される」挙動のことである。
カオスにはおおよそ以下のような特徴が認められる。
1.や2.の特徴のために、カオスにおいては過去の挙動による将来の挙動の予測が困難となる。
一般に線形と見做される系であっても、実際には(厳密には)非線形であることが多い。カオスは何ら特別な現象ではなく、それらの非線形な系において普通に観察される現象である。
上記の1ないし3の特徴を表すものとして、式(3.1)で表されるロジスティック写像を例に挙げる。
としてaを0から4まで0.005ずつ変化させて計算した、
から
までの値をプロットしたものが図 3.1である。
aが0から約3.6までの間、Xは一つの値に収束するか、有限個の値に振動する。しかしaが約3.6以上になると、値のとりかたに周期性は見られず、不規則に見える。
図 3.2は図 3.1の の範囲を拡大したものである。全体とよく似た形状が部分に現れている。
初期値 を0.70000、0.70001としたときの値の変化を示したのが図 3.3、図 3.4である。初期値の極わずかな差がその後の挙動に大きく影響していることがわかる。