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カオスニューロンモデル

従来のニューロンモデルでは, 他数からなる入力の加重特性と発火のしきい値作用を ニューロンの特徴的な機能として採用し, モデル化を行なっている。 これは,忠実なモデル化は取り扱いを複雑にし, その本質を理解するのに障害になると考えられているからである。

しかし, 実際のニューロンは, そのようなニューロンモデルが示す以上の多様性を示す。 従来のニューロンモデルの出力は, 全か無かの法則(階段関数)で与えられていたが, 実際の神経細胞において空間固定の条件で注意深い実験を行うと, 神経膜の活動電位生成過程は,厳密には全か無かの法則には従わない。 ニューロンの出力は,図 3.3 のシグモイド関数のように, 急峻ではあるが連続的に応答の大きさが変化する 「ファジー」な活動電位特性を有することが分かる。 そして,ニューロンのカオスを生成する軌道不安定性は, この連続的なしきい値に起因する。 すなわち,ニューロンのカオスは 全か無かの法則の不成立ゆえに成立するのである。 そこで従来のニューロンに, 「カオス」の特徴を取り入れたカオスニューロンが 考え出された[4]。 従来のニューロンに追加された カオスニューロンの特徴は, ニューロンが発火した後,一時的にしきい値が増加する (不応性)特性と 膜電位や不応性の情報は,減衰されながらも少しの期間だけ残るという特性の 2点である。

   figure141
図 3.3: シグモイド関数

合原らはCaianiello-Sato-Nagumoモデルの出力関数を連続関数に変更した カオスニューロンモデルを提案している[4]。 このモデルは次式によって定義されている。

  equation150

ここで x(t+1) は時刻 t+1 におけるニューロンに出力, A(t) は時刻 t における外部入力の大きさ, tex2html_wrap_inline1101 は不応性の項に対するスケーリングファクタ( tex2html_wrap_inline1221 ), k は不応性の定数 tex2html_wrap_inline1225g は軸索伝搬関数である。 tex2html_wrap_inline1229 は活性化関数の傾きを決定するパラメータである。 関数 f はニューロンの内部状態 u と出力 x(t+1) との 関係を与える出力関数で, 図 3.3 のシグモイド関数,式(3.3)で与えられる。

  equation157



Toshinori DEGUCHI
2003年 4月14日 月曜日 09時55分33秒 JST