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: カオスニューラルネットワーク : カオスニューラルネットワーク : マカロック・ピッツモデル   目次


カオスニューロンモデル

実際のニューロンの出力では容易にカオスが観察されるが、 2.2節に示した マカロックとピッツのニューロンモデルではカオスは観察されない。 これは、マカロック・ピッツモデルでは考慮されなかった、 実際のニューロンの有する機能・性質がカオスを生成しているためである。

マカロック・ピッツモデルでは考慮しなかった実際のニューロンの有する機能・性質として、 不応性が挙げられる。不応性とは 2.1節に記したように、ニューロンが発火した後、 閾値が一時的に高くなり発火し難くなる性質のことである。 高くなった閾値は時間の経過に伴い指数関数的に減衰する。

また、 2.1節の中でニューロンは全か無の法則に従う、つまり、 ニューロンは図 2.2のように離散的な応答を示すとしたが、 厳密には全か無の法則には従わず、応答の大きさは連続的である。

式(2.3)が、上記の2点を機能・性質として新たに取り入れた、 カオスの観察され得るニューロンモデルである。以降これをカオスニューロンと呼ぶ。


\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
x(t+1) = f(y(t+1))\\
\displaystyle y(t+1) = S(t)-\alpha\sum_{d=0}^{t}{k^dx(t-d)}-\theta
\end{array}
\end{displaymath} (2.3)

$x(t)$は時刻$t$での出力、$y(t)$は時刻$t$での内部状態、$S(t)$は時刻$t$での入力、 $\alpha$は不応性の項に対する係数、$k$は不応性の時間減衰定数、$\theta$は閾値、 $f(y)$は出力関数をそれぞれ表す。 $f(y)$はシグモイド関数(式(2.4)、図 2.4)を用いる。


\begin{displaymath}
f(y) = \frac{1}{1+\exp(-\frac{y}{\epsilon})}
\end{displaymath} (2.4)

図 2.4: シグモイド関数($\epsilon $ = 1)
\includegraphics[scale=1.0]{eps_file/sigmoid.eps}

$\epsilon $はシグモイド関数の傾きの緩急を表す定数であり、 小さいほどその傾きは急峻となる。

入力$S(t)$を時刻tによらず一定であるとし、


\begin{displaymath}
a = (S(t)-\theta)(1-k)
\end{displaymath} (2.5)

とおくと、式(2.3)は 以下の式(2.6)に変形される。


\begin{displaymath}
\begin{array}{l}
x(t+1) = f(y(t+1))\\
y(t+1) = ky(t)-\alpha x(t)+a
\end{array}
\end{displaymath} (2.6)

$\epsilon $を0から0.25まで変化させてy(10000)からy(12000)までの値を計算し、 プロットしたグラフが図 2.5である。 ($\alpha = 1.0$$k = 0.5$$a = 0.3$とした。)

図 2.5: カオスニューロンの応答
\includegraphics[scale=1.0]{eps_file/chaotic_neuron_graph.eps}

カオスニューロンがロジスティック写像と似た応答を示すことがわかる。



Deguchi Lab. 平成20年2月29日