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6.6 シナプス前抑制による制御

 

   figure509
図 6.5: シナプス前抑制

一昨年度までの研究では、カオス状態をコントロールする方法として、 第 4 章 に示したパラメータ tex2html_wrap_inline2284 を変化させることにより行ってきた。 また、昨年の研究ではシナプス前抑制による制御を取り入れた。 なぜなら、 tex2html_wrap_inline2284 を変化させるには、 ニューラルネットワークの外部から制御する必要がある。 しかしシナプス前抑制を用いることにより、 ニューラルネットワークによる制御が可能となる。 扱うことによって間接的に制御を行うものであるのに対し、シナプス前抑制は、 直接的にニューロンの結合部を変化させることにより抑制を行うものであるから である。 本研究でもこのシナプス前抑制による制御を採り入れる。

シナプスとは、神経細胞と神経細胞の結合部分のことをいい、 一般に、

  equation517

X'
: シナプス後細胞へ送られる信号。
w
: シナプス結合荷重。
X
: シナプス前細胞の信号。

とモデル化される。

次に、シナプス前抑制とは、 実際の神経回路網にも観られるもので、 興奮性シナプスのシナプス前終末を脱分極させ、 興奮性シナプスから放出される信号の量を制御することにより 抑制をかけるものである[6](図 6.5 )。

これは、 式(6.1)のシナプス結合荷重 w を制御するものと考えられる。 また、本来シナプス前抑制は、興奮性シナプスのみに働くものであるが、 本研究においては、興奮性、抑制性に問わず一様に働くものとし、 次式のようにモデル化した。

  equation525

tex2html_wrap_inline2296
: シナプス結合荷重のパラメータ(シナプス前抑制関数)。

   figure530
図 6.6: 抑制関数1

昨年の研究では、 シナプス前抑制関数 tex2html_wrap_inline2296 は、図 6.6 に示すように シナプス前抑制 Z=1 のとき、 tex2html_wrap_inline2302 (カオス状態)をとる点と、 Z=0 のとき、 tex2html_wrap_inline2306 (自己想起)をとる点の2点間を 反比例の曲線で結び、次式のように定めた。

  eqnarray539

本研究ではシナプス前抑制関数によるサーチアクセスへの影響を調べるために、 次式で表される階段関数(図 6.7 )を用いて比較を行なってみた。

   figure547
図 6.7: 抑制関数2

  equation554

ここで、式(6.3) 、 式(6.4)で示したシナプス結合荷重 tex2html_wrap_inline2312 を カオスニューロンモデルの式(4.11)に考慮することによって、 次式(6.5)のようになる。

  eqnarray567

よって、本研究に用いるシナプス前抑制を考慮したカオスニューロンモデルは、 式(4.10)(6.5)(4.12)によって決定される。



Deguchi Toshinori
1996年11月14日 (木) 12時50分06秒 JST