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65パターンの学習

  52パターンの学習においては、不応性の影響はさほど見られなかったので、更にパターンを増やした学習を試みる。 経過の観測し易さ等を考慮した結果、図6.10に示す13パターンを加えた65パターンを用いて学習を行うものとする。

   figure399
図 6.10: 数字記号13パターン

これをAからZ、次いでaからz、更に0から順に入力を与えて学習を行わせた際の状態を図6.116.12に示す。 65パターンを用いた学習を行う中では、前節までの結果に比べて頻繁に忘却が発生しており(図6.11参照)、また、全てのパターンに対する学習が完了する以前にも忘却が見られた(図6.12参照)。

3000セット中、全てのパターンを覚えていたセット数の割合は約28%と前節までの結果に比べて極端に少ない。 また、初期の数十セットを除いて全体として常に6000〜7000回の学習が起こっている(図6.13参照)。 学習つまり結合荷重の変化が起こっていながら、全てのパターンを正しく想起出来ることが少ないのは、あるパターンを想起するための荷重変化を起こしたことで、別のあるパターンを想起することが困難な状態にニューロンが安定してしまったためであると推測される。

   figure411
図 6.11: 65パターン・3000セットの学習成功数

   figure418
図 6.12: 初期の学習成功数(65パターン・3000セット)

   figure425
図 6.13: 65パターン・3000セットの学習発生回数

忘却の度合いを人の目に判りやすくする狙いで以て、入力パターンと想起パターンの差異を図6.14に示す。 この図において縦軸は誤想起ニューロン数、つまり、入力した情報を正しく想起できなかったニューロンの数を表している。 これはニューロンの数やパターンのサイズに等しい7×7、即ち49が最大値となる。 横軸の学習セット数は、前節までと同様に3000セットを最大としているが、図においては、ある程度の学習を終える幾らか前から、学習初期の頃の様子を観察することにする。 図6.12から、50セットを超えた頃から全てのパターンに対する学習を完了する様子が見て取れるので、30セットを横軸の左端に設定した。 また、ここでの結果は、特に忘却の激しいMとd、次いで忘却の目立ったmとuのものとなっている。

   figure434
図 6.14: M, d, m, uの誤想起ニューロン数

Mやdは前節でも忘れやすい部類のパターンとして挙がっており、今回の場合も同様の現象が見られた。 ある程度の学習が完了した後発生する忘却では、これらのパターンが頻繁にその対象となるのが特徴的である。

6.1は、図6.14と同範囲の、ある程度のパターン数を学習した後の学習状況を表す。 学習パターンは、直前のセットでは学習出来ていなかったが現セットでは正しく想起出来たパターンを、忘却パターンは、直前のセットでは正しく想起出来ていたものの現セットでは正しく想起出来なかったパターンを示している。 ここからは、一つのパターンを学習した際、またはその後数セット中に、既に学習を済ませていた別のパターンを忘れて行く様子が見て取れ、絶えず学習が起こると同時に絶えず忘却も起こっているがために、全てのパターンを覚えている状態が保たれにくい事が判る。

65パターンの学習を試みた場合においては、不応性による忘却作用が比較的現れやすい。 前節までの結果と併せて考えると、記憶パターンが増えると全てのパターンを覚えるのが困難になり、学習が起こった際に忘却も起こりやすくなったと考えられる。 多くのパターンを覚えさせようとするならば、条件設定等をより慎重に行う必要があると言える。

 

 
学習 忘却 想起
セット パターン パターン 成功数
31 m d,n,6 60
32 E,d,n,6 N,u 62
33 u m 62
34 N,m d 63
35 d u 63
36 M,u d 64
37 d M 64
38 64
39 p 63
40 p d,u 62
41 u m 62
42 d,m 64
43 M d,u 63
44 u M 63
45 d m 63
46 d 62
47 d,m 64
48 d 63
49 m 62
50 M,m u 63
51 d,u M 64
52 M d,u 63
53 M,p 61
54 M,d,p,u 65
55 M,d,p,u 61
56 d,p,u K 63
57 K u 63
58 M 64
59 M 63
60 63
61 M 64
62 u 65
63 M 64
64 64
65 M 65
66 65
67 65
68 65
69 M 64
70 M 65
71 m 64
72 m M,u 63
73 M,u 65
74 M,d 63
75 M 64
76 M 63
77 d 64
78 d 63
79 M,d 65
80 d,u 63
81 u 64
82 d M 64
83 M K,d 63
84 K,d u 64
85 u M 64
86 M 65
87 d 64
88 d 65
89 d 64
90 d M 64
91 M 65
92 M 64
93 64
94 M 65
95 M,d 63
表 6.1: 学習と忘却の様子

to 1cm
学習 忘却 想起
セット パターン パターン 成功数
96 n 62
97 d,n 64
98 d 63
99 M 64
100 64
101 d m 64
102 m M 64
103 d 63
104 d 64
105 64
106 M d,p 63
107 p M,R 62
108 M,R,d 65
109 65
110 65
111 M 64
112 u 63
113 M,u 65
114 m 64
115 m 65
116 65
117 65
118 d 64
119 64
120 d 65
121 M,d 63
122 d 64
123 M 65
124 M,d 63
125 63
126 M,d 65
127 M,d 63
128 M 64
129 d M 64
130 M 65
131 K,M,d 62
132 K,d 64
133 64
134 64
135 64
136 64
137 64
138 d 63
139 M,d 65
140 d 64
141 d M 64
142 M 65
143 65
144 K,M 63
145 K 64
146 64
147 M 65
148 K,M,d 62
149 K,M,d u 64
150 u d 64
151 d 65
152 M 64
153 M d 64
154 d 65
155 M,d 63
156 M 64
157 d M 64
158 64
159 M d 64
160 d M 64


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Toshinori DEGUCHI
2005年 4月 1日 金曜日 17時24分52秒 JST