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8.4.1 要素平均が特殊なパターンの検索

 

まず,条件のうちの要素平均が最小である 0.25 のパターンについて, tex2html_wrap_inline2464 , tex2html_wrap_inline2466 を適当に設定して検索した。ただし, tex2html_wrap_inline2468 についてはこれまでの 研究[1, 2, 4, 5, 13, 14]で使用していた 10.0 を用いた。 その結果すべての想起に成功し,想起時間の平均も 1 桁であった。 これまでの想起時間の平均は,早くても 40 程度[4]であったので, このパターンの使用により短時間の検索が可能であることがわかる。

逆に,要素平均が最大の 0.75 のパターンについても同様に検索した。 しかし, tex2html_wrap_inline2464 , tex2html_wrap_inline2466 をどのように設定しても,全く成功しなかった。 そこで,原因を調べるために,カオスニューロンの出力パターンを調べた。 その結果, 出力パターンの要素 tex2html_wrap_inline2510 の 平均 tex2html_wrap_inline2882 が 約 0.75 となるようなパターンはほとんどなく, 約 0.25 のパターンがほとんどであった。 これは,0.25 のパターンと 0.75 のパターンを式 (8.2) を用いて 学習させると,どちらも同じシナプス結合値が得られるためである。 したがって,0.75 のパターンの検索が, 実際には 0.25 のパターンを検索していることに相当しているため, 成功しないと考えられる。

そこで,カオスニューロンの出力パターンの要素平均が約 0.75 となるように, 内部定数を変更することを検討した。 出力パターンの要素平均を大きくするためには, 式 (6.5), (4.2) から 内部状態 tex2html_wrap_inline2884 , tex2html_wrap_inline2886 の値が大きくなるようにする必要がある。 そこで,式 (6.7) の tex2html_wrap_inline2468 に注目し, この値を小さく設定することにした。

tex2html_wrap_inline2468 の値を小さくして,0.75 のパターンについて同様に検索した 結果,出力パターンの要素平均を約 0.75 とすることに成功した。 検索についても成功させることができ, 検索時間が 10 程度という短時間での検索も可能となった。

同様にして,要素平均 0.50 の直交パターンについても検索した。 これまでの研究 [4, 5] では,完全な直交パターンの場合, 半分ぐらいの確率でしか成功していなかったが, tex2html_wrap_inline2468 を 0.25, 0.75 のパターンの 場合の半分ぐらいの値にして検索した結果, 想起時間は 30 程度であったがすべて成功した。

したがって,この tex2html_wrap_inline2468 の設定により 完全な直交パターンでも検索成功率を高めることができることがわかる。 これは, 出力パターンの要素平均を 0.50 ぐらいにすることができるためと考えられる。 また,これまでの研究で失敗していた原因として, 出力パターンが学習させたパターンの一つから抜け出すことができず, 周期的な振舞いとなってしまうことがわかっている。 つまり,カオスニューロンのカオス的な性質が, カオス領域から周期領域[10]へ移行してしまったと考えられる。 したがって,このパラメータの変更により, カオスニューロンの状態がカオス領域から周期領域へ抜け出すことがなくなり, 目的のパターンを検索することができると考えられる。

想起が 0.25, 0.75 のパターンより時間がかかるのは,要素 1, 0 が入れ替わった 反転パターンもカオスニューロンから出力されてしまうためと考えられる。 これは前述のように,自己相関学習により, 反転パターンを学習させたものとシナプス結合値が同じになり,しかも, 反転パターンの要素平均も 0.50 となってしまうためである。

また,学習パターンの一つが出力されてから別の学習パターンへ移るのに, 時間がかかるのも原因の一つと考えられる。 これは,各パターン間のポテンシャルが 0.50 のパターンの方が高く, 別のパターンへの移動がしにくいためと考えられる。 0.25, 0.75 のパターンは別のパターンへの移動がしやすく, シナプス前抑制により自己想起状態に移行させると, 目的のパターンへ素早く収束するため, サーチアクセスには理想的なパターンといえる。

0.25, 0.75 のパターンは対称したパターンなので, 検索結果が全く同じになるように考えられるが, カオスニューロンにより,要素 1, 0 のパターンを用いていることや, 内部定数やしきい値 tex2html_wrap_inline2768 の影響でニューロンの状態が完全な対称にはならず, 検索結果に違いが生じるものと考えられる。 0.75 のパターンの検索で各内部定数を変更することにより, 0.25 のパターンでの検索に最適なニューロンの状態に, なるべく近づけようとしていることになるが, 完全に同じ状態にならないため, 0.25 のパターンよりやや検索時間がかかってしまうと考えられる。 このことについては,次節の結果と合わせてもう一度検討する。

なお,最も最適な内部定数と想起時間平均 tex2html_wrap_inline2898 は, 表 8.1 のとおりである。

 

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要素平均 tex2html_wrap_inline2464 tex2html_wrap_inline2466 tex2html_wrap_inline2468 tex2html_wrap_inline2898
0.25 0.35 0.64 10.0 5.515
0.50 0.46 0.55 6.7 27.330
0.75 0.15 0.86 2.8 10.660
表 8.1: 最も最適な内部定数と想起時間平均



Deguchi Toshinori
1998年03月12日 (木) 16時16分01秒 JST