: 状態フィードバックによる1入力システムの極配置
: sysconh16
: 安定性と可観測性
入力で
次元状態変数をもつ線形システム
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(20.1) |
において,状態
が直接計測できる場合,すなわち
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(20.2) |
と置ける場合を考える.このシステムの安定性,過渡応答特性などは,その
個の極の配置に大きく左右される.極と安定性の関係については前章で示したので,ここでは極と過渡応答の関係を簡単な例により示す.
例6.1 システム
を考える.
ただし,
とする.このシステムの伝達関数行列は
で与えられる.
ただし,
とした.したがってこのシステムの極は
となる.これら
については明らかに
のときには
は実数
,
のときには
は実数の重解
,
-
のときには
は複素数
,
のときには
は純虚数
である.
また,このシステムの極配置とインディシャル応答(ステップ応答)との関係は,図6.1のようになる.図より判るように,極が複素平面上で原点から遠いほど過渡応答の速度は速く(図6.1(b)の横軸スケールが
であることから,同一の
に対しても
が大きいほど収束が速いことに注意),原点から見た極の位置が負の水平方向に近いほど減衰が大きい.
さて,システム(20.1),(20.2)に対して,線形状態フィードバック制御則
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(20.3) |
を適用してみる.ただし,
は定数フィードバックゲイン行列,
は
に代わる新たな制御入力である.このとき制御系全体は図6.2のようになり,閉ループ系の状態方程式は
となる.式の形は(20.1)式と同じであるが,状態変数
の係数行列が
から
に変わっている点に注意されたい.これにより開ループ系の極が移動することから,開ループ系の極が複素平面上の望ましい位置にない場合に,制御則(20.3)などによって,閉ループ系を構成し,その極を希望する位置に配置する問題を極配置問題という.
次に状態フィードバックによる極配置が有効であることを示す簡単な例を与える.
例6.2 電機子制御直流サーボモータについて考える.
をモータの回転角とし,
とおくとき,モータの状態方程式が
で与えられるものとする.ただし,
とする.
このシステムの極は
である.いま,
なる状態フィードバックを与えると,閉ループ系は
となり,閉ループ系の極は
の根で与えられる.よって,この極を
に配置したいときには
を
とすればよい.したがって,
の配置を適当に決めることができ,これにより適切な応答速度と減衰をもたせることができる.
endo
平成16年6月30日