: 伝達関数と状態方程式
: sysconh16
: 行列指数関数と状態方程式の解
ここでは遷移行列
を具体的に求める方法について述べる.(2.5)式からも判るように,遷移行列
は行列の無限級数で定義される.したがって,(2.5)式から直接これを求めることは困難である.このことから,まず第1の方法としてラプラス変換を利用した求め方を紹介する.
行列
の各要素をラプラス変換して得られる行列を
で表すことにする.すなわち
とする.(2.6)式を初期条件(2.9)の下でラプラス変換すれば
であり,関数
で表せば
となる.これを整理すれば
よって
![\begin{displaymath}
e^{At} = {\cal L}^{-1}[(sI-A)^{-1}].
\end{displaymath}](img107.png) |
(3.1) |
以上により,与えられた行列
の遷移行列が(3.1)式により与えられることがわかる.
例2.3 (3.1)式を用いて,行列
に対する遷移行列
を求める.まず
を計算すると
となる.したがって,上式の各要素をラプラス逆変換すると
となる.
第2の方法として,ラプラス変換を用いない方法がある.
次正方行列
の相異なる固有値を
とし,各
の重複度を
とする.明らかに
が成り立つ.したがって,行列
の特性多項式
は
で与えられる.ただし,
は
の相異なる固有値で,
はその重複度を表し,
である.
これに対し、時間
の関数
を係数として
次多項式
を考えると
は
 |
(3.2) |
によって与えられる.ただし
は,
を
の
に関する
階微係数とするとき,次式を満足するものとする.
 |
(3.3) |
実際,(3.2)式により行列指数関数
が与えられることを示す.
任意の
に対して関数
を
で定義する.上式を両辺
についての
階導関数を求めると
を得る.これと(3.3)式より
と
に対し
が成り立つ.したがって,
は,
を因数として持つ.ゆえに
は,
の特性多項式
を因数として持つ.さらにケーリー・ハミルトンの定理より
であるから
よって
となる.
例2.4 (3.2)式を用いて行列
に対する行列指数関数
を求めてみる.
より,特性多項式は
となる.したがって,
の固有値とその重複度は
である.行列
は3次正方行列であるから
.すなわち,
とおくと,(3.3)式より
となる.また,(3.2)式より
となる.したがって,(3.4)〜(3.7)式より,
となる.
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endo
平成16年6月30日