: 可観測正準形(1出力)
: 同値変換
: 同値変換
ここまでは、与えられたシステムを正則行列により同値変換しても、システムの基本的な性質は変化しないことを示した。しかしながら単純に正則行列といっても無数に存在することからどのような正則行列が意味を持つのかを調べる必要がある。以下ではこれについて1入力システムを例にして説明する。
本小節では与えられたシステムに対し,同値変換をすることでシステムを可制御正準形,可観測正準形と呼ばれるある種の標準的なシステム表現に変換する.なお,可制御正準系はシステムの極の設定や最適制御を求める際に用いられる.また,可観測正準形は状態オブザーバやカルマンフィルタなどの構成に用いられる.
以下ではシステム
は可制御な次の1入力システムであるとする。
システム(8.7),(8.8)は可制御であるから、可制御性行列
は次の正則行列であるから、これを使った変換行列としては
の2種類が候補となる。それぞれについて調べてみる。
ここで興味深いのは(8.10)の方である。なぜなら(8.10)のについて
より
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(8.11) |
となるからである。したがって、以下ではを使って同値変換を行う。
(8.10)式より
なので
となり、(8.12)の左からを掛ければ
を得る。
後述するように、教科書ではではなく、を係数行列に採用している。このことは特に重要ではないのだが、教科書と同様の表記にするためには、変換行列としてではなく
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(8.14) |
とすればよい。
ただしは
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(8.15) |
である。
明らかには正則行列であるからは正則である。
以下、上記変換行列
を利用することにより次の定理が得られる。
定理 (1入力1出力システムの可制御正準形) 可制御な1入力1出力システム
は,次のシステムに同値である.
ただし,
はの特性多項式
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(8.18) |
の係数であり,
は適当な実数である.
(証明)
より
さらに
とおけば(25.4)より
これにCayley-Hamiltonの定理を適用すれば
となり
よって
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(8.21) |
となる。についても同様に
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(8.22) |
より明らか。(証明終)
例3.6 次のシステムを考える:
このシステムの可制御性行列は
より,
となり可制御であるから,可制御正準形に変換可能である.
このことからの係数行列の特性多項式を求めると
となる.したがって,変換行列は
となる.
したがって,このシステムの可制御正準形は
また,例2.7で示したように,このシステムの伝達関数は
となる.ここで共通因子が存在するのは,システムが可観測でないためである.
: 可観測正準形(1出力)
: 同値変換
: 同値変換
endo
平成16年6月30日