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以下ではシステム
 次の1入力システムであるとする。
次の1入力システムであるとする。
システム(8.7),(8.8)は可制御であるから、可制御性行列
![$M_C = \left[ \begin{array}{cccc}b & Ab & \cdots & A^{n-1}b \end{array}\right]$](img310.png) は
は 次の正則行列であるから、これを使った変換行列としては
次の正則行列であるから、これを使った変換行列としては
 の2種類が候補となる。それぞれについて調べてみる。
の2種類が候補となる。それぞれについて調べてみる。
 を変換行列とした場合:
を変換行列とした場合:
 を変換行列とした場合:
を変換行列とした場合:
 について
について
![\begin{eqnarray*}
T^{-1} \tilde{b} &=& b \\
M_C \tilde{b} &=& b \\
\left[ \begin{array}{cccc} b & Ab & \cdots & A^{n-1}b \end{array}\right] &=& b
\end{eqnarray*}](img317.png)
 を使って同値変換を行う。
を使って同値変換を行う。
(8.10)式より
 なので
なので
 を掛ければ
を掛ければ
後述するように、教科書では ではなく、
ではなく、 を係数行列に採用している。このことは特に重要ではないのだが、教科書と同様の表記にするためには、変換行列として
を係数行列に採用している。このことは特に重要ではないのだが、教科書と同様の表記にするためには、変換行列として ではなく
ではなく
 は
は
明らかに は正則行列であるから
は正則行列であるから は正則である。
は正則である。
以下、上記変換行列
 を利用することにより次の定理が得られる。
を利用することにより次の定理が得られる。
 
定理 (1入力1出力システムの可制御正準形) 可制御な1入力1出力システム

 は
は の特性多項式
の特性多項式
 は適当な実数である.
は適当な実数である.
 
(証明)
 より
より
![$T^{-1} = \left[ \begin{array}{ccc} t_1 & \cdots & t_n \end{array}\right]$](img344.png) とおけば(25.4)より
とおけば(25.4)より


 についても同様に
についても同様に
例3.6 次のシステムを考える:
このシステムの可制御性行列 は
は
![\begin{displaymath}
M_c = \left[ \begin{array}{cc} 1 & -1  1 & -2 \end{array} \right]
\end{displaymath}](img357.png) 
 となり可制御であるから,可制御正準形に変換可能である.
このことから
となり可制御であるから,可制御正準形に変換可能である.
このことから の係数行列の特性多項式を求めると
の係数行列の特性多項式を求めると
![\begin{displaymath}
\det[sI-A] = \det \left[ \begin{array}{cc}s+1 & 0  0 & s+2 \end{array}\right] = s^2 + 3s + 2
\end{displaymath}](img358.png) 
 は
は
![\begin{eqnarray*}
T &=& ( M_c T_1)^{-1} \\
& = & \left( \left[ \begin{array}{cc...
...
&=& \left[ \begin{array}{cc}1 & -1  -1 & 2 \end{array}\right]
\end{eqnarray*}](img359.png)
したがって,このシステムの可制御正準形は
![\begin{eqnarray*}
\dot{\bar{x}}(t) &=& TAT^{-1}\bar{x}(t) + Tbu(t) \\
&=& \left...
...
&=& \left[\begin{array}{cc}2 & 1 \end{array}\right] \bar{x}(t)
\end{eqnarray*}](img360.png)
また,例2.7で示したように,このシステムの伝達関数は
 
 が存在するのは,システムが可観測でないためである.
が存在するのは,システムが可観測でないためである.
 
 
 
 
 
