: 線形関数オブザーバ
: sysconh16
: 同一次元状態オブザーバ
推定したい状態変数は次元であり,利用可能な出力が次元であるから,
一般に状態オブザーバの次元数は以上でなければその機能を発揮できない.
このことから次元状態オブザーバを最小次元状態オブザーバと呼ぶ.
本節ではこの最小次元状態オブザーバの一つの構成法を与える.
行列を適当に選び,行列
|
(25.1) |
が正則となるようにする.このを用いて
なる変換を行なえば
となる.ただし
である.
また(25.1)式より
であるから
|
(25.4) |
であることが示せる.
がとに分かれていることに応じて,次のように
を分割する.
|
(25.5) |
すると
であることから(25.2)式は
と書き換えられる.いま仮にを状態変数とするシステムを考え,
(25.6)式が状態方程式,(25.7)が出力方程式であると見なす.すなわち
ただし
である.
すると,に対する同一次元状態オブザーバは,(8.13)式より
となる.ここで(25.8)式の右辺に存在するの項を消去するために
の変数変換を行なえば,(25.8)式は
となる.また(25.9)式のは,
と表されるから,の推定値は
|
(25.11) |
によって与えられる.ただし
|
(25.12) |
である.よって,に対する次元状態オブザーバは,(25.10),(25.11)式で与えられる.
なお,対が可観測ならば,対
も可観測であることが示せるので,適当なを選ぶことによって,オブザーバの極,すなわち
の固有値を任意に設定できる.
以上の結果より,次の手順によって,一つの最小次元オブザーバ(25.10),(25.11)が得られる.
-
が正則となるの
決定
-
による
の算出
-
の固有値が,目標通りになるの決定
- (25.12)式によるの計算と,(25.10)の係数行列の計算
例7.2 例7.1のシステムに対して,最小次元状態オブザーバを,その極がとなるように設計する.
システムは
より,
ととると,
より,
となる.
これより
を満たすとしてが得られる.
よって,オブザーバは次式のようになる.
なお,最小次元状態オブザーバ(25.10),(25.11)は,
ととるとき,と表せることと,(25.12)を用いれば,定理7.1を満たすことが確かめられる.
演習問題7.2 システムを考える.ただし
とする.このシステムに対して最小次元状態オブザーバを,その極がとなるように設計せよ.
(解答例)
とすると
よりは正則となる.これよりを求めると
であるから
となる.次に
を求めると
となる.
と置き,
の固有値がとなるように設定する:
であるから
したがって,
となり,結局
である.
よって,題意を満たすの一つとして
が選べる.
以上により,最小次元オブザーバの状態方程式は
となり,出力方程式は
となる.
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: sysconh16
: 同一次元状態オブザーバ
endo
平成16年6月30日