ここでは,想起率および想起頻度の偏りを比較し, 想起の状態を評価する. また,全て同期で行った場合と, 非同期のみで行った場合の結果も示し, どちらの想起状態に近いかを検討する. 同期のみ,非同期のみの値は, 前章の同期と制約あり非同期の結果である.
まず,式(5.3)で定義した想起率について比較する. 図6.3に想起率を示す. 縦軸が想起率,横軸が学習したパターン数である.
想起率についても全体的に同期学習+非同期想起のほうが高いが, 大きな差ではない. 全体を通してr=0.4付近に値が集中している. この結果より,ネットワークの同期・非同期という違いは, 想起率に大きく影響しないことがわかる.
さらに,式(5.4)で定義した
想起頻度の偏りについて調べる.
図6.5は学習パターンに対する想起頻度の偏りを示した物であり,
縦軸は想起頻度の偏り ,横軸に学習パターン数をとった.
図6.5で,非同期学習+同期想起では,9〜11パターンあたりで
想起度数の偏りが1となる.これは1つのパターンのみしか想起されていないためである.
また,非同期学習+同期想起は同期のみの値と近い.
同期想起+非同期想起は非同期のみよりも は小さい値を示しているが,
20パターン以降はその差が小さくなっている.
最後に想起率と想起頻度の偏りの両面から,
動的想起の状態を評価するため, で比較を行う.
図6.6に
を示す.
縦軸が
,横軸が学習したパターン数である.
図6.6から, 学習同期+想起非同期のほうが良い早期状態, つまり,学習したパターンが平等にでているということがわかる. また,同期学習+非同期想起は非同期のみの値に, 非同期学習+同期想起は同期のみの値に近いことが読み取れる.
以上3つの値,r, ,
の比較結果より,
非同期学習+同期想起は同期のみの動的想起の状態が近く,
同期学習+非同期想起は非同期のみの状態と近いといえる.
これらのことより,非同期のネットワークの動的想起がよい状態であるのは,
学習時に非同期で学習するからではなく,
動的想起が非同期で動いているからと考えられる.