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3.1 カオス

カオスとは自然界によく見られる現象であり、身の回りの様々な所において存在している。その例としては、ひらひらと舞い落ちる木の葉、さまざまに様相がかわる大空を流れゆく雲などである。 このような現象は一見何の規則性もなくランダムのように見える。しかし、実はそのすべては簡単な方程式で表現できるものと考えられている。 ここで、次に示す式を用いてカオスの挙動について簡単に説明する。 [4]

  equation59

式(3.1)は、ある時間 t+1 における値をその一つ前の時間 t を使って表す式であり、大変簡単な形をしている。 いま、 t=0 において、初期値を x(0)=0.30000 と定めると値の時間的な変化は図3.1のようになり、式自体は非常に簡単であるが、そのダイナミクスは非常に複雑で周期的になるでもなく、一定の値になるでもなく、 -1 から 1 の間をランダムにいったり来たりしている。 このように、複雑な動きにある状態をカオスという。

さて、今度はおなじ式を用いて t=0 において初期値を x(0)=0.30001 と定める。この値の時間的な変化は図3.2のようになり、これもまたカオスの状態にあるといえる。

ここで注意すべき点は、この二つの図は全くおなじ式を用いて全くおなじ時間変化で書かれたにも関わらず、そのダイナミクスは全く違ってしまっているということである。 このように、初期値のほんのわずかな違いが出力に大きな違いを生じさせる。

ここで、カオスの特徴をまとめると

である。

   figure67
図 3.1: x(0) = 0.30000 における値の時間変化

   figure74
図 3.2: x(0) = 0.30001 における値の時間変化

カオスは、生物界においても存在していることが今までの研究より明らかになっている。そして、第一章でも述べたように、情報の生成、喪失、加工などの働きを持っていることも分かっている。しかしそれのみにとどまるはずもなく、生物においてカオスがどのような働きを持っているかは多くの研究者たちの多大な努力にも関わらず、実際のところ未解明のままである。



Deguchi Toshinori
1996年12月18日 (水) 11時08分12秒 JST