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6.5 ノイズ耐性実験

本学習法では入力パターンにノイズが付加されていても、ノイズに偏りがなければ正しいパターンを学習することができる。なぜならノイズに偏りがなければ外部入力項を時間加算しているために、ある程度入力を続けると外部入力項は正しいパターンの影響を多く受けて正しい符合になる。またその影響でニューロンからの出力も正しい符合を出力するようになる。結合荷重の変化は外部入力項と他のニューロンの出力の積の符合で決定されるため、離散時間ごとに見るとノイズの影響で結合荷重が正しい変化をしない時もあるが、多数繰り返されるために全体としては正しいパターンが想起できる結合荷重に変化することができる。

     figure544
図 6.8: 訂正能力
図 6.7: 学習成功率

6.76.8は入力パターンにノイズを付加して学習した時の、ネットワークの学習成功率と学習後の誤り訂正能力を測定した。実験はネットワークに6個のパターンを学習させる。1個のパターンにつき100回入力を行ない、それを全てのパターンで行ない1セットとし、3セット、10セット、20セットで行なった。学習成功率実験は、ノイズをランダムに変化させ学習を行なった時に全てのパターンの学習に成功した割合である。学習に成功したかの判断には、学習後のネットワークの結合荷重値をホップフィールドネットに与え、ノイズなしのパターンを入力したときに全てのパターンを正しく想起できるかで判断した。この実験をランダムの種を100通り変化させ成功した割合をグラフにした。また学習後の誤り訂正能力実験は、学習成功率実験で全てのパターンの学習に成功したネットワークの結合荷重値をホップフィールドネットに与え、同じ数のノイズを付加したパターンを入力したときに全てのパターンを正しく想起できた割合である。

6.7よりセット回数が3セットの時より10、20セットの方が、ノイズの数が多い時の学習成功率が高い。これはセット回数が増えることで結合荷重を変化させる回数が多くなり、3セットではまだ学習が足りない場合にさらにより良く学習が行なわれたためである。また、10セットと20セットでは学習成功率に違いがほとんど出なかった。これはパターンを学習するための結合荷重の変化が10セットまでで十分行なわれ、それ以上セット回数を増やしても学習がほとんど行なわれなかったからである。またセット回数を増やしても、ノイズの数の限界は15個であった。

6.8より学習に成功した結合荷重値を与えたホップフィールドネットにおいて、ノイズが存在するパターンを入力しても正しいパターンを想起するこてができる。セット回数を多くして学習させた結合荷重値の方が訂正能力が高くなった。これはセット回数が多い方が、より良く結合荷重を変化させることができ、より良い学習が行なわれたからであると考えられる。

相関学習により学習させた結合荷重では、ノイズが存在しないパターンを入力しても6個のパターン全て正しく想起するこてができないため、本学習法による学習は相関学習より大変優れていることが分かる。



Deguchi Toshinori
Wed Jul 12 09:07:09 JST 2000