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安定状態に入るまで時間の測定

想起の実験において想起が成功したとき, 位相のずれはあっても出力と内部記憶の変遷はまったく同じであるといえた。 想起ではネットワークの結合荷重は変化しない。 変化するのは内部記憶の値も含めた入力と出力だけである。 なので,入力と内部記憶層の値に,想起成功時のものが現れるとそこからは 時系列にそって周期的に変化していく。 内部記憶を持つニューラルネットは,入力に変化を与え想起を行ったとき, その過程の中で内部状態は常に変化していき,やがて安定し時系列にそって 周期的に変化していく状態に入る。 この状態を安定状態と呼ぶ。 つまり安定状態に入ると想起は完全に成功するといえる。

では入出力の値が安定状態になるまでにどのようなことがあるのだろうか。 ネットワークは,安定状態になるまで何回かの時間ステップ入出力を繰り返す。 そこで想起のための最初の入力を与えてから, 安定状態に入るまでの時間を想起の評果基準として考え,これを測定してみた。 この 時間を想起時間と呼ぶことにする。 入力としては,前述の想起実験と同じく入力をずらした場合, 内部状態をずらした場合で実験を行った。その結果は図 6.6 図 6.7 に示される結果となった。図の横軸は,入力又は内部記憶の値に第何音目の教師信号又は内部状態 を用いたかで,縦軸はその時の想起時間である。

   figure318
図 6.6: 入力の変化に対する想起時間

   figure327
図 6.7: 内部記憶値の変化に対する想起時間

この結果より,入力にずれを与えた時よりも,内部記憶にずれを与えた時の方が, 想起時間にさまざまな値が現れていることがわかる。 これは,入力の値は教師信号の時系列であるため, ずらしても同じ値になっていたりすることがあるからであろう。 逆に内部状態は同じような値になっていることが少ないため, それをずらしたとき,想起時間はバラバラな値になっているのだろうと考えられる。 ネットワークの違いによって,一つの入力に対する想起時間は全然違っていた。



Toshinori DEGUCHI
2004年 3月19日 金曜日 16時33分51秒 JST