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ニューロン

ニューロンとは、人間および動物の神経細胞のことを指す。 生体の脳神経系は、外界からの情報を感覚器を介して入力され、 脳で情報処理を行ない、さらに効果器を介して外界へ出力されるシステムである。 脳神経系は構造はたいへん複雑であるが、 基本的にはニューロンが基本構成要素となっている。 概図を図 6.4 に示す。 ニューロンは人間の脳の場合は100億から1000億個程度あるといわれている。

   figure11
図 2.1: 神経細胞の構造

神経細胞は、細胞体、樹状突起、軸索の3つに分けられる。 樹状突起は、細胞体表面から突き出た多くの枝分かれを持った突起をいう。 通常、1つの細胞体から数十の樹状突起が出ている。 軸索は枝分かれした末端で、他の神経細胞の細胞体や樹状突起と結合し、 ネットワークを形成している。 この結合をシナプス結合という。 1つの細胞が受けるシナプス結合の数は、数百ないし数千、まれには数万にもおよぶ。[1]

ニューロンは興奮すると出力側の軸索に電気パルス列を送り出すが、興奮していないときはほとんど出さない。

1943年、マッカロとピッツはニューロンを多入力1出力素子としてモデル化した。 マッカロとピッツによって提案されたニューロンのモデルを図 6.4 に示す。

   figure21
図 2.2: ニューロンのモデル

この図の tex2html_wrap_inline1461 は対象のニューロンの入力の i 番目の結合からの入力であり、 tex2html_wrap_inline1465 はその入力と対象ニューロンとのシナプス結合の強さを表す。 tex2html_wrap_inline1467 はこのニューロンが持つしきい値であり、ニューロンへと伝わる信号がこれを越えると興奮し、その値以下ならば興奮しない。 yはこのニューロンの出力である。以上のことを表すと下の式になる。

   eqnarray31

式(2.4) において、 tex2html_wrap_inline1461i 番目の入力信号を示し、 tex2html_wrap_inline1465 はその入力と対象のニューロンとの結合の強さ、また tex2html_wrap_inline1467 はしきい値を示す。 tex2html_wrap_inline1465 の範囲は正から負であり、それぞれ興奮性結合、抑制性結合を表している。 つまり式 (2.4) は、他のニューロンからの荷重和がニューロンに与えられ、それからしきい値を引いたものが u であることを意味している。

f(u) は出力関数である。 この出力関数の取りうる値としては、 基本的なものとして2値のみ(0または1)を出力する関数である。 これをパーセプトロンという。

equation42

パーセプトロンはニューロコンピュータ研究の原点であるとともに、現在でも基本要素として重要なものである。 これは1961年にローゼンブラッド(Rosenblatt)によって提案された。 さまざまな応用が可能で、学習能力を持つ2値論理関数要素とも見ることができ、実時間信号を処理する適応フィルタ、パターン認識機械とも見ることができる。[2]

また現在、一般的に使われている出力関数はシグモイド関数である。 ここでは、関数 f(u) として

  equation48

といった形の0〜1までの連続した値をとる図 6.4 のような関数である。 実際の脳の出力にはばらつきがあるため、0か1のステップ関数よりも、このシグモイド関数を用いた方がニューロンの出力関数に適切であるといえる。

   figure54
図 2.3: シグモイド関数



Toshinori DEGUCHI
2005年 4月 1日 金曜日 17時11分43秒 JST