next up previous contents
Next: 階層型と相互結合型ニューラルネットワーク Up: ニューラルネットワーク Previous: ニューラルネットワーク研究の背景

ニューロン

生体の脳神経系は、外界からの情報を感覚器を介して入力され、脳で情報処理を行ない、さらに効果器を介して外界へ出力されるシステムである。 脳神経系は構造はたいへん複雑であるが、基本的にはニューロン(Neuron:神経細胞)が基本構成要素となっている。概図を図 6.5 に示す。 ニューロンは人間の脳の場合は100億から1000億個程度といわれている。

   figure12
図 2.1: 神経細胞の構造

神経細胞は、細胞体、樹状突起、軸索の3つに分けられる。 細胞の中央部分に当たるのが細胞体であり、タンパク質など細胞の活動に必要な物質はここで生成される。 樹状突起は、細胞体表面から突き出た多くの枝分かれを持った突起をいう。通常、1つの細胞体から数十の樹状突起が出ている。 軸索は枝分かれした末端で、他の神経細胞の細胞体や樹状突起と結合し、ネットワークを形成している。これをシナプス結合という。1つの細胞が受けるシナプス結合の数は、数百ないし数千、まれには数万にもおよぶ。[1]

ニューロンは興奮すると出力側の軸索に電気パルス列を送り出すが、興奮していないときはほとんど出さない。 この電気パルスは1と0に量子化された信号を他のニューロンに送ると考え、興奮状態に送り出される信号を1、非興奮状態に送り出される信号を0とした。 1943年にマッカロ(W.S.McCulloch)とピッツ(W.Pitts)によって提案されたニューロンのモデルを図 6.5 に示す。

   figure22
図 2.2: ニューロンのモデル

この図の tex2html_wrap_inline1174 は対象のニューロンの入力の i 番目の結合からの入力であり、 tex2html_wrap_inline1178 はその入力と対象ニューロンとのシナプス結合の強さを表す。 tex2html_wrap_inline1180 はこのニューロンが持つしきい値であり、ニューロンへと伝わる信号がこれを越えると興奮し、その値以下ならば興奮しない。 yはこのニューロンの出力である。以上のことを表すと下の式になる。

   eqnarray32

式(2.4) において、 tex2html_wrap_inline1174i 番目の入力信号を示し、 tex2html_wrap_inline1178 はその入力と対象のニューロンとの結合の強さ、また tex2html_wrap_inline1180 はしきい値を示す。 tex2html_wrap_inline1178 の範囲は正から負であり、それぞれ興奮性結合、抑制性結合を表している。 つまり式 (2.4) は、他のニューロンからの荷重和がニューロンに与えられ、それからしきい値を引いたものが u であることを意味している。

f(u) は出力関数である。 この出力関数の取りうる値としては、基本的なものとして2値のみ(0または1)を出力する関数である。これをパーセプトロンという。

equation42

パーセプトロンはニューロコンピュータ研究の原点であるとともに、現在でも基本要素として重要なものである。 これは1961年にローゼンブラッド(Rosenblatt)によって提案された。 さまざまな応用が可能で、学習能力を持つ2値論理関数要素とも見ることができ、実時間信号を処理する適応フィルタ、パターン認識機械とも見ることができる。[2]

また現在、一般的に使われている出力関数はシグモイド関数である。 ここでは、関数 f(u) として

  equation48

といった形の0〜1までの連続した値をとる図 6.5 のような関数である。 実際の脳の出力にはばらつきがあるため、0か1のステップ関数よりも、このシグモイド関数を用いた方がニューロンの出力関数に適切であるといえる。

   figure54
図 2.3: シグモイド関数



Toshinori DEGUCHI
2004年 3月22日 月曜日 11時57分15秒 JST