卒業生の声

先輩から後輩へ

土木工学科・環境都市工学科を卒業された先輩方がどのような道を進んだのか,今どのようなフィールドで活躍されているのか,先輩方から貴重なコメントを寄せていただきました.

進路選択の参考にしてください.

段下 剛志さん(2011年度本科卒業・45期生,2013年度専攻科修了・18期生,岐阜市立長良中学校出身)

私は環境都市工学科から専攻科(当時は建設工学専攻)へと進学しました。角野研出身です。専攻科を修了してからさらに長岡技術科学大学大学院へと進学し、修士課程・博士課程の合計5年間を過ごしました。そして、2019年4月より、徳山工業高等専門学校土木建築工学科の教員となりました。担当科目は主に環境工学です。岐阜高専では角野先生がご担当されている科目ですね。

このメッセージは、私が教員として初めて授業を担当した日、まだ教員(社会人)になって10日も経っていない時に書いたものですので、残念ながらカッコイイことはかけません。なぜ、私が高専の教員と目指したのか、その理由は、角野先生を始めとする環境都市工学科の先生たち、そして同じ教室で数多くの授業を受けてきたクラスメートと過ごした岐阜高専での7年間という時間が、自分にとって特別な、かけがえのないものとなったからです。だからこそ、高専のさらなる発展に貢献したいと思い、高専の教員となる道を選びました。とても曖昧な表現でごめんなさいm(__)m。

高専は「即戦力となる技術者」を育成するために設立され、先輩・同期・後輩のみなさんは社会の一員として様々なフィールドでご活躍されています。その中で、私のように教員として高専に戻ったり、大学に勤めて、次世代の技術者を育成するという生き方、これも道の一つとして心に留めてくれれば嬉しいです。在学中のみなさん、自分らしい道を歩んでくださいね。“人生思い出づくり”です。

※2019年執筆

長屋 和宏さん(1991年度卒業・25期生,一宮市立中部中学校出身)

岐阜高専を卒業した後、国土交通省国土技術政策総合研究所(就職当時は、「建設省土木研究所」、以下:「国総研」と記します)に勤務し、つくばに住んで、26年目になります。

途中、国土交通本省勤務が2年間ありましたが、それ以外は、専ら研究所に勤務しています。

これまでの研究所勤務の前半は、鉄筋コンクリート橋脚の耐震性能の研究をしていました。入省3年目に阪神・淡路大震災が発生し、中でも高速道路の倒壊は、社会的に大きな衝撃を与えました。僕の研究としては、地震で被災した橋梁の復旧や既存の古い橋梁の耐震補強に関する膨大な実験を経験させて頂き、当時の規程(「兵庫県南部地震により被災した道路橋の復旧に係る仕様」、「平成8年道路橋示方書」など)の改訂に関わりました。

僕は、高専の卒業研究で土質特性が地盤の液状化に与える影響を調べていましたので、学生時代の研究等とほとんど繋がりの無い部署に配属になる同期もいる中、地震関係の研究室に配属されたことで比較的スムーズに社会人としてのスタートを切ることが出来ました。(とは言っても、地震対策という点で関連していただけで、土質工学とコンクリート工学では全く別物でした)

建設省が国土交通省に様変わりするタイミング(平成13年4月)で本省に異動となり、開発途上国へのインフラ技術支援に関する業務を経て、国総研に戻ってきました。

この頃から景気後退による影響よりインフラに対する考え方も「造るから守る」にシフトしており、施設の高齢化、メンテナンスサイクルといったキーワードが着目されるようになりました。それを追うように私の研究所勤務の後半も、道路防災のソフト的対策に関するものとなりました。特に、東日本大震災では、近代のインフラが経験したことが無い巨大津波による被害等から、想定外にも対応できるような対策や人的にも物的にも既存のリソースを活かした防災、に関する研究をしてきました。

具体的には、地震発生直後に被災した道路施設をいち早く把握するための技術開発、施設を管理する職員のマニュアル・BCPのとりまとめ、といった成果を出してきました。

さらに近年では、防災と教育の関わりが非常に重要視されていることから、国土交通省および国総研の防災に関する取り組みを子ども達に理解していただくように、小中学校への出前講座などのアウトリーチ活動にも力を入れています。 これらの経験を基に、昨年度からは企画部企画課に配属となり、研究所全体の災害対応等のマネジメント、広報・アウトリーチに関する業務を行っています。

インフラに関する知識を人に伝えるという現在の業務では、高専で幅広く均一に工学・力学について学んだこと、入学時の早い段階から工学の概論を学んだこと、等が役に立っていると思います。

最後に、進路の選択では、おぼろげでも良いので7年後くらいの自分をイメージすると良いと思います。僕は、何も考えずに研究所に来てしまいました(実は当時の「土木研究所」が何処にあるかも知らなかった)。最初の数年は前述の通り、大きな震災の影響もあり、無我夢中で仕事に取り組んでいましたし、成果も上げられている気がしていました。しかし、一段落したときに次にやるべきことが一瞬だけ見えない時期がありました。今振り返ると、このときは仕事がある程度こなせるようになったからこそ、次の山が見えないという、成長の証だったと思いますが、最初からこの時期のイメージが何となくでも頭の中に持てていたら、次の仕事に対するモチベーションなどがかなり違っていたと思います。僕の場合は幸いなことに、本省に異動があったため、仕事への取り組み姿勢を切り替えることが出来ました。 僕の今の目標は、アウトリーチ活動などを見た小学生・中学生が国総研もしくは国土交通省に入って頂くことです。この目標が達成には7年後では結果が出ていないと思いますが、まずは岐阜高専から数年後に僕の目標を叶えてくれる学生さんが出てくることを望んでいます。

※2017年執筆

所 靖子さん(1974年度卒・8期生)

※2017年1月19日の1C・CE入門にお越しいただいた後にお寄せいただいた原稿です.

19日は貴重な時間を土木技術者女性の会会員の体験談を聞くことに当ててくれてありがとう。君たちの時代の感性あふれる感想を受け取り、自分の学生の頃を思い出して懐かしかったです。

卒業してからも、勤務時間以外の時に技術とは何か、人間とはなにかを考えて本をよく読んだ、と話しました。仕事に関する勉強もしたけど、本もよく読みました。土木の小説では曾野綾子さんの書かれた「湖水誕生」や、吉村昭さんの「高熱隧道」、旅や土地のことを書かれた司馬遼太郎さんの「街道をゆく」などたくさん読みました。国土交通省中部地方整備局の国道維持出張所の勤務の時、昼休みに近くの図書館で借りて読みました。今は久しぶりにラフカディオ・ハーン「日本の面影」という本を読んでいます。「日本の面影」には、明治時代の美しい日本とそこに住む人たちの様子が、来日して間もないハーンの美しい文章で書かれていて、生活と景色の調和についてしみじみと感じながら、大切のものはなんだろうと考えています。

役所の土木技術者としての仕事の中に、フランスからの留学生やノルウェーの女性土木技術者と会話することがありました。彼や彼女がその時の日本の景色や仕事ぶりを見ながら、気づいたことを教えてくれました。フランスからの留学生曰く、「日本は日本のアイデンティティーを大切にしなさい。」ノルウェーの女性土木技術者に「いくつまで働くのですか?」と尋ねたところ「公的には73才まで、それ以降は個人の領域」との答えでした。確かにその通りと思いました。

日本で日本としての大切な景色や習慣を理解し、日々景色を作り上げたり、それらを守っていくのは、詰まるところ個々の人たちの生活や思いがだんだんと実現していくことで、その一員として、自分自身の心の持ちようや考えを自分で鍛えることが大切だと思いながら、これらの会話や本の内容を思い起こしています。そういう意味で、学生の頃に哲学の本を読んだことが面白かった(自分の心を鍛える糧になった)と言いました。

学校の図書館はあの頃は文系の図書はほとんどなくて、奨学金をはたいて買ったボーボワールの「人はすべて死す」とか「人間について」とかを読んで、今生きているこの時間自分を大切に生きて努力するしかないなと考えたこともあります。

19日に講演した女性の会会員の話を聞きながら、黙々と自分の仕事、家庭、趣味等に集中して生きている自分は幸せだと思ったことです。

君たちも今在る青春の貴重な時間を大切にして、いい人生を送ってください。

15,6才の今、土木技術者への道を選んだ君が悩み考えることも多いでしょうが、前途は洋々です。

体と心を大切に、よく鍛えて、共に頑張りましょう!

※2017年執筆

河合 信之さん(1978年度卒・12期生)

清水建設に入社してすでに37年が過ぎました。この間現場一筋、ものつくりの醍醐味を味わってきました。37年の会社人生で国内勤務10年、海外勤務27年目となりいつの間にか海外勤務が当たり前のようになっています。最初の勤務地は22歳で配属された、中東イラクのバクダットでした。何もわからずコンクリートを練り、それを打設するということを炎天下の中で行ったのも懐かしい思い出です。その後東南アジア・アフリカを勤務地とし、振り返ればすでに35か国訪問、9か国目の赴任で今ベトナムに来ています。その間橋梁・プラント・上下水道などインフラ工事を中心に様々な経験を大過なく積むことができたのも、ひとえにバレー部で鍛えた体と根性そして丈夫に産んでくれた両親のおかげと感じています。

思いで深い工事は多くありますが、シンガポールの地下鉄工事はその中でも格別です。30年前に一番下の工事係員としてラッフルズ駅を担当しました。その頃のシンガポールはまだ発展途上でしたが、シンガポールの若手エンジニア達は皆、良い国つくりをしようという意気込みであふれていました。そこで3年半苦楽を共にした彼らは今私の親友です。そして月日は流れ2年前現在の勤務地ベトナムホーチミンに地下鉄工事のため赴任しました。30年前にシンガポール初の地下鉄を工事係員として従事した私が、今回はベトナム初の地下鉄工事に建設所長という立場で従事しています。2か国で初の地下鉄を担当するという恵まれたエンジニア人生です。そして現在の工事が完了する2019年には60歳を迎えることになります。今はこの工事が自分のエンジニア人生の集大成になるのかなと感じています。日本人スタッフ20名、ローカルスタッフ120名をまとめることは簡単ではありませんが、あまり肩ひじ張らずに毎日を過ごせるのも経験を積んだからなのでしょうか。

そんな私が今後輩に伝えたいことは、自分の作ったものが後世に残るというかけがえのない喜びを是非味わってほしいということです。また一度しかない人生を日本だけで過ごすことはあまりにももったいないことだと思いませんか。是非海外に出て「豊かなやりがいのある人生」を送ってはいかがでしょうか。

※2016年執筆

山田 哲士さん(1992年度卒業・26期生,岐阜市立島中学校出身)

国土交通省中部地方整備局に勤務して23年、これまで愛知県・岐阜県・静岡県の職場に勤務し、河川・道路の調査・設計・現場監督など幅広い仕事を経験しながら、中部各地で新たな発見・感動「富士山キレイ!魚ウマイ!」など、楽しく生活することができました。生活と仕事が両立しながら、スケールの大きい事業・やりがいの大きい仕事ができる職場は私の自慢です。

高専5年生の時、担任の鈴木孝男先生のご指導のもと、私が中部地方整備局に決めた理由は、スケールの大きな仕事ができるからです。卒業後40年も仕事をするわけですから、しっかりした「やりがい」を見つけないと毎日やった!できた!という充実感が感じられず、仕事が楽しくないですよね。実際に就職してみてイメージどおりで先生や先輩に感謝しています。

岐阜高専のOBが多いことも安心材料です。どこの職場にも先輩がいます。岐阜・豊田高専等OB職員でつくる「友専会」(会員約240人)があり、仕事の相談~飲み会・趣味の野球まで、公私にわたり、年齢に関係なく楽しく過ごすOB会があります。岐阜高専OBの進路の中では中部地方整備局が一番多く、先輩の助けに本当に感謝です。

もっと職場や先輩の仕事をイメージしたい方はこちら!

中部地方整備局HP:https://www.cbr.mlit.go.jp/index.html

中部地方整備局Twitter:https://twitter.com/mlit_chubu_koho

※2015年執筆

松井 智一さん(1991年度卒業・25期生,池田町立池田中学校出身)

高専卒業後、岐阜県に入庁し、奉職23年目です。土木技術職として岐阜県に入庁し、河川、砂防、道路建設、道路維持、上水道、情報技術等、多様な業務に従事してきました。特に思い出深い経験としては、採用後数年で橋りょうの建設工事に何橋か監督として従事できたこと、またその後、この経験を生かして建設や維持補修に関する設計基準やマニュアルの策定作業に従事した折に、合理的かつ分り易い内容として取りまとめ等行えた点です。こうした作業を行う際には、岐阜高専在校の折に身体で学んだ「効率的、合理的、簡潔」といった校風が役に立ったと今でも思い起こされます。

現在は、揖斐郡内の道路、河川、砂防といった社会資本の整備、維持管理等を行う土木事務所に勤務しており、数年前に発生した「一般国道417号 揖斐川町櫨原(はぜはら)地区地すべり対策事業」等の大規模な災害復旧や、落石・交通安全対策等といった道路の安全確保を行うための係で係長職として従事しています。

岐阜県では、岐阜高専卒業生は「即戦力」として期待されています。一時採用数は少なくなったものの、近年、改めて採用者を増やしています。また、岐阜県に土木技術職として採用された岐阜高専卒業生雄志で、「専和会」という親睦会を設置し、現在70名以上の会員が所属して親睦を深めています。

※2015年執筆

桑原 真吾さん(2004年度卒業・38期生)

高専本科から専攻科へ進み、名大大学院を経て、現在は日本工営(株)にてダムの設計・耐震解析をしています。

高専時代の専門知識や実験・演習で体験したこと(水理・土質・材料・構造等)を生かしながら業務に臨んでいます。

※2015年執筆

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