自動計測

1. 目的

マイコンボード(Arduino)を用いた自動計測を行い、過渡現象についての理解を深める。

2. 基礎知識

Arduinoのアナログ入力は10bitの分解能をもち、入力電圧0~5Vをディジタル値​= 0~1023の間で読むことができる。入力電圧​はArduinoの基準電圧値5[V]とディジタル値​から、

と測定できる。

3. 使用器具

  • Arduino(各自で持参する。この実験は2人一組のため、各班2つ以上必要)
  • PC(各自で用意するのが望ましい。なければ情4のPC)
  • コンデンサ
  • 抵抗
  • ダイオード
  • ツェナーダイオード(なくてもよい)
  • ブレッドボード
  • テスタ(抵抗、コンデンサ測定用)

4. 実験方法

4.1 電圧の読み取り

analogRead()関数を使い、アナログ入力ピン「A0」の電圧を読み取る。

int analogInputPin = 0; //アナログPinはA0を使う
/** 初期設定の関数 一度だけ実行される */
void setup() {
  Serial.begin(9600);
}
/** 定期的に実行される関数 頻度はdelay関数で調整 */
void loop(){
  int val = analogRead(analogInputPin);
  Serial.println(val); // PCに結果を送信
  delay(1000); // 1000ミリ秒ごとに電圧を測定
}

測定結果はシリアルモニタで確認できる。

「A0」ピンと「+5V」ピンを接続し、値を確認する。
また、「A0」ピンと「GND」ピンを接続し、値を確認する。

テスタでもこの2端子の電圧を測定する。

4.2 電圧の変換

プログラムを修正し、電圧をボルト単位で表示できるようにする。
以下のプログラムを修正する。

int analogInputPin = 0; //アナログPinはA0を使う
/** 初期設定の関数 一度だけ実行される */
void setup() {
  Serial.begin(9600);
}
/** 定期的に実行される関数 頻度はdelay関数で調整 */
void loop(){
  int val = analogRead(analogInputPin);
  float val_volt = // ここの変換を自分で考える 10235Vに変換
  Serial.println(val_volt); // PCに結果を送信
  delay(1000); // 1000ミリ秒ごとに電圧を測定
}

同様に、5Vを計測する。

4.3 計測の準備

図1の回路を組む。R2には100Ω以外の任意の抵抗を接続する。ZD(ツェナーダイオード)がない場合、接続しない。

Image

図1 コンデンサ充放電回路

この回路でスイッチを①側に接続する(接続は手でつなぎかえる)と、コンデンサが充電される。このときの電圧を0.5秒ごとに測定し、5Vに近い値になっていることを確認する。測定の間隔はプログラムで0.5秒ごとに変更する。

また、スイッチを②側に接続すると放電される。放電をはじめて十分な時間が経った後、0Vに近い値になっていることを確認する。

4.4 自動計測

図1の回路において、時定数 が8から30秒程度になるような​を選定して回路を組む。

スイッチを①側に倒し、コンデンサを充電する。
充電が完了した後、スイッチを②側に倒し、コンデンサの放電のようすを測定する。
時間を横軸、コンデンサの端子電圧を縦軸としたグラフを描き、先生のチェックを受ける。
​を3通りに変えて同様の測定を行い、ひとつのグラフにまとめる。
同様に、電流についてもグラフを作成する。

この実験では、2種類のグラフを作成する。

  • 電圧の時間変化(3種類)
  • 電流の時間変化(3種類)

4.5 素子値の測定

実験で使用したの値をテスタで測定する。

5. 検討課題

充電完了時にコンデンサに蓄えられたエネルギー[J]をコンデンサ電圧​と静電容量から求めよ。また、抵抗に流れた電流を求め、そこからで消費された電力量を求めよ。

補足

ダイオード

回路の「ZD」はツェナダイオード、「D」はダイオードを指す。
ZDは定電圧を作るために使われているが、今回は使用しない。

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左の黒いダイオードを使う
向きがあるので注意、白い線が入っているのがマイナス側(カソード)

なぜ1箇所だけで電圧が測定できるか?

上の回路図を見ると、電圧を取り出して測定しているのはコンデンサの+側の端子だけである。
しかし、ふつう電圧計をつなぐときは電位差を測るので、プラスとマイナス両方つなぐ。
Arduinoの電圧測定では、マイナス側は共通のGND。端子からGNDまでの電位差を測っている。

時定数

適切な抵抗値を選択すると、放電の際に以下のような波形が出る。
Image
充電された電圧の5Vから徐々に電圧が落ちるが、その落ち方は緩やかになっていく。
これを式で表すと
となる。ここで、を時定数を呼び、この値は放電の際電圧が倍となる時間である。
つまり、時定数が大きいほど、充電や放電がゆっくりになる。
今回使っているCR回路の場合、コンデンサの静電容量と抵抗の積となる。
つまり、コンデンサの静電容量が同じならば、接続する抵抗の抵抗値が大きいほど放電は遅くなる。

電解コンデンサの向き

電解コンデンサには向きがある。逆電圧をかけると液漏れの可能性があるため、素子に書いてあるマイナスを確かめること。